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足回りが「硬い/柔らかい」や「乗り心地がいい」とは?【クルマ用語解説】
車のレビューや試乗記でよく目にする「足回りが硬い/柔らかい」「乗り心地がいい」という表現。車の初心者には体感としてわかりにくいものです。そこで今回は、モータージャーナリストの鈴木ケンイチさんに、これらの言葉が意味する乗り味の違いを、解説していただきました。
※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください
まずは足回りの仕組みを知っておこう
車が走るときに、路面にでこぼこ(凸凹)があると振動が発生します。当然、でこぼこが大きくなるほどに、振動は強くなり、車体を通じて乗員に衝撃として伝わります。
そんな、路面から生まれる衝撃が乗員に伝わるような、いわゆる“乗り心地の悪い車”には、誰も乗りたくありません。そのため、車にはさまざまな乗り心地を良くするための仕組みが備わっています。その代表が「サスペンション・システム」、つまり「足回り」です。
そして、中でも「スプリング(ばね)」と「ダンパー(ショックアブソーバー)」という部品が、非常に重要な役割を果たします。

スプリングは主にスチール製のコイル(車種によっては棒状などもある)であり、ダンパーは内部にオイルを満たした筒状の部品です。車の前輪の裏をのぞくと、この2つの部品を確認することができるはずです。
スプリングは金属製の「ばね」ですから、路面からの衝撃力を“縮むこと”で受け止めます。そして、ダンパーは筒の内部の小部屋をオイルが行き来するときの抵抗を利用して、衝撃の力をゆっくりとした動きに変化させます。
路面とタイヤの間で発生した衝撃力をスプリングが受け止め、ダンパーはスプリングが暴れることを抑えている、というわけです。

ここで重要になるのが、スプリングとダンパーに「どれだけの力を与えるか?」ということです。スプリングの力とは反発力であり、ダンパーは減衰力(げんすいりょく)を生み出します。
乗り心地が「硬い/柔らかい」とは?
反発力の強い、いわゆる硬いスプリングを使うと、路面からの大きな衝撃力を受け止めることができます。一方、強く硬いスプリングは、小さな力では動きません。つまり、小さな衝撃を吸収することができずに、その振動をそのまま車体に伝えます。
同じように、ダンパーも強くなるほど、強いスプリングの暴れを抑えますが、小さな力では動きません。強いスプリングとダンパーを装着した車に乗ってみると、路面の凹凸で発生する小さな振動をすべて拾って、“ゴツゴツ”した乗り心地を感じます。

逆に反発力の弱い、いわゆる柔らかいスプリングは小さな力で動くため、小さな衝撃を吸収することができます。乗り心地としては、“フワフワ”と船に乗っているような感覚です。
ところが、大きな衝撃力があるとスプリングが縮みきってしまい、それ以上の衝撃はそのまま車体に伝わります。いわゆる“底づき”や、“フルバンプ”と呼ばれる状態で、そうなるとガツンと強いショックを伝えます。

つまり、強いスプリングとダンパーを使うと、動きにくい“硬い足回り”になります。ゆっくりと走った時の小さな衝撃は、そのまま車体を通じて乗員に伝わりますが、速度を高めたときの大きな衝撃は、ある程度はしなやかに受け止めることができます。
一方、弱いスプリングとダンパーを使うと、動きやすい“柔らかい足回り”となります。ゆっくり走った時の振動を上手にいなせますが、反対に大きな衝撃はそのまま車体と乗員に伝えてしまうのです。
ちなみに、スプリングとダンパーだけでなく、他にも「スタビライザー」や「ブッシュ」といった部品も乗り心地に影響を与えます。ただし、どれも強く硬い部品を使うか、弱く柔らかい部品を使うかという基本の部分は、スプリングとダンパーと同じです。
「乗り心地がいい」とはどんな感じ?
街乗りを主体とした普段使いの車なら、小さな衝撃を上手にいなす“柔らかい足回り”のほうが、よいでしょう。ゴツゴツとした振動を意識せず、多くの時間を快適に過ごすことができます。
しかし、だからといって無条件でスプリングとダンパーを柔らかくすればいいわけではありません。なぜなら、スプリングとダンパーには、衝撃を緩和するだけでなく“それ以外の仕事”もあるからです。
ひとつは、「車の重量を支える」という仕事。たとえば、乗車人数の多い3列シートのミニバンは、車体が重たくなりますから、その重さを支えるには、強いスプリングとダンパーが必要になります。

重さに対してスプリングが弱いと、ちょっと揺れただけでスプリングが受け止められる力の許容範囲を超えてしまいます。そうなると、すぐに“底づき”が起き、ガツンという不快な衝撃が発生してしまうのです。
また、カーブを曲がるときに発生する遠心力に対抗するのも、スプリングとダンパーの仕事です。弱いスプリングとダンパーでは遠心力に負けて車が大きく傾き、不安定になってしまうもの。安定を保つためには、やはりスプリングとダンパーに適正な強さが求められるのです。

さらに、運転したときのフィーリングにも、スプリングとダンパーは大きな影響を与えます。また、ドライバーがハンドルを切ったときに、「どの程度の反応スピードで車が曲がり出すか」にも影響を与えます。
スプリングとダンパーのチューニング(味付け)次第で、車の動きや特性は俊敏になったり安定感が高まったりと変わるのです。
最後に「車酔い」という難問も存在します。足回りを柔らかくして、細かな衝撃をいなすようにしたところ、逆にゆっくりと大きな船のような揺れが発生することがあります。その大きな揺れが、車酔いを誘発することも……。
つまり、スプリングとダンパーのチューニングは、乗り心地だけでなく、重量やハンドリング性能、そして車酔い対策など、さまざまな要件のバランスを考慮し、車種ごとに検証したうえで定められるというわけです。

なお、少しコツコツするような硬めの乗り心地の車のほうが「酔いにくい」といえますが、車酔いは振動だけでなく騒音や視界なども関係しており、因果関係は複雑ですから、一概に「車酔いしにくい車はこうだ」と、断言することはできません。
乗り心地がいい車を選ぶには?
では、自分にとって「乗り心地のいい車」を選ぶとき、試乗で何を意識するとよいのでしょうか。乗り心地は、動き出した瞬間から始まり、速度や路面の変化、カーブを曲がるときなど、走行状況によって刻々と変化します。その一つひとつの感覚や感触を、しっかりと意識してみましょう。
走り出してすぐにわかるのは「路面の凸凹のいなし方」と、その時に発生する「音の大きさ」です。硬い足は、ガタガタと小さな振動と音を伝えますが、柔らかければ気になりません。
さらに速度を上げると、振動と音が変わるはずです。少なくなるのか多くなるのかは、車次第です。また、加速と減速を何度か繰り返すと、車の姿勢変化の大きさもわかってきます。

加速をすればフロント部が浮き上がり、減速では下がります。その姿勢変化の大きさが、運転のしやすさや車酔いにも関係します。また、カーブを曲がるときの、車の動きも要注意です。
ハンドルをゆっくり切ってみたときに車は、どのように動くでしょうか。サっと「俊敏に曲がり始める」のか、それとも「ゆったりと動き始める」のか。また、曲がっているときの「車の傾き」はどうか、などです。
家族がいれば同乗してもらい、その意見を聞くのも忘れずに。前席と後席で、乗り心地が違う車はたくさんあります。そもそも、車は家族と一緒に使うもの。家族の意見もしっかりと尊重しましょう。

ここで重要なのは、「乗り心地には正解がない」ということです。車の乗り心地に対して、良い/悪いは、人によって異なります。硬い足が好みの人がいれば、柔らかい方がいい人もいます。よほど極端なものでなければ、好き/嫌いの中で判断されることが多いでしょう。
さらには、同じような硬さ/柔らかさでも、加減速やカーブでの車の姿勢変化の大きさが変わってくることもあります。これも、どれが正解というものはなく、好みの問題となります。
ですから、試乗で車の動きを総合的にチェックして、「気に入ったところ/そうでないところ」を確認し合いましょう。同じ車に乗る家族の意見も尊重しながら、最終的に自分は何を重視するのかを考えて、答えを出すのがベストです。
好みの「乗り心地」を持つ車を見つけよう!
今回は、クルマ用語として使われる「足回りが硬い/柔らかい/乗り心地がいい」について、鈴木ケンイチさんに解説していただきました。
街乗りがメインの人、高速走行が多い人、1人で乗る人、家族で乗る人……と、車の使い方は人それぞれです。どんなにデザインが気に入った車でも、乗り心地に不快感があるようでは、愛車として長く乗るのも苦痛になってきます。この記事を参考に、いろいろな車に試乗しながら好みの乗り心地を持つ車を見つけてみてください!
(文:鈴木ケンイチ 企画・編集:木谷宗義/type-e 編集:田村恵美/PASSERBY GRAFFICS)
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