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車のサンキューハザードは違反?利点や欠点、上手な使い方

車のサンキューハザードは違反?利点や欠点、上手な使い方

ハザードランプを数回点灯させて「ありがとう」の気持ちを伝える、いわゆる「サンキューハザード」。すっかりおなじみのマナーと思っている人も多いかもしれませんが、実はこの行為、「やめてほしい」「逆に迷惑」と思っているドライバーもいるようです。 

ハザードランプは、その名の通り“非常時”に使うためのもの。それ以外の目的で使うのは問題だとする指摘はもっともと言えるでしょう。 今回は「サンキューハザード」について、道路交通法上の観点や安全運転のマナーから、メリットとデメリットを整理してみます。 

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

この記事の執筆者

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

自動車ジャーナリスト。日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。自動車ジャーナリストとして、新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さも伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナ、筋トレなど。

※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください

サンキューハザードとは? 

サンキューハザードとは?
サンキューハザードとは?

車を運転していて、進路変更や合流の際に道を譲ってもらったとき、後続車へ「ありがとう」の気持ちを伝える手段として使われている「サンキューハザード」。 

ハザードランプ(非常点滅表示灯)を2~3回、短く点滅させることで「譲ってくれてありがとう」と感謝を伝えるもので、日本の道路ではよく目にする光景です。読者の皆さんの中にも、日頃からこの方法で謝意を伝えているという人は多いのではないでしょうか。 

ただし、このサンキューハザードは、あくまでドライバー同士の慣習的なコミュニケーション手段であり、正式なルールではないことに注意が必要です。「マナー」とも言い切るには意見の分かれる部分もあり、安全性の観点から使用を疑問視する声も少なくありません。 

法律上はどうなの?道路交通法におけるハザードランプの定義

法律上はどうなの?道路交通法におけるハザードランプの定義
法律上はどうなの?道路交通法におけるハザードランプの定義

ハザードランプは、正式には「非常点滅表示灯」といい、道路運送車両の保安基準 第41条の3において、装備が義務付けられている装備です。 

この非常点滅表示灯は、道路交通法施行令により使用が義務付けられているケースが2つあります。 

一つ目は「夜間の道路上での駐停車」。同法第18条の2では、以下のように定められています。 

自動車は、(略)夜間、道路の幅員が5.5メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示灯又は尾灯をつけなければならない。

二つ目は「通園通学バスの駐停車」。 

同法第26条3の2では以下のように定められています。 

通学通園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているときは、車両の保安基準に関する規定に定める非常点滅表示灯をつけなければならない。

ほかにも「こんな場面」で使用する

ほかにも、こんな場面で使用する
ほかにも、こんな場面で使用する

法律で規定されている使用場面以外にも、高速道路会社からは、高速道路で渋滞に遭遇したときにハザードランプを点灯させることが求められています。これは後続車に渋滞を知らせて追突事故となることを防ぐためです。 

また、使用したほうがよい場面としては、法律上で義務付けられているのは夜間だけですが、雨や霧などで視界が悪い時に道路上で駐停車する際にも、ハザードランプを点灯することで後続車に自車の存在を明確に示すことができます。さらに、駐車場などで車を止める際も、ハザードランプを点灯させることで、「ここに駐車します」と周囲に意思を伝えることが可能です。 

もちろん、これ以外でも何らかの異常が発生した際には、ハザードランプを点灯することで周囲に危険を通知する役割を果たします。 

このように、ハザードランプはその名が示す通り、「危険」を周囲に知らせたいときに点灯させるもの。謝意を伝えるために設けられたものではありません。

法律違反?「非常時以外は使ってはいけない」という規定はない

非常時以外は使ってはいけない、という規定はない
非常時以外は使ってはいけない、という規定はない

では、謝意を伝えるためにハザードランプを点灯させることは、法律に違反する行為なのでしょうか。 

道路交通法第53条の「合図」に関する規定のなかでは、「合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない」と規定されています。 

ただし、この条文は「左折・右折・転回・徐行・停止・後退、または同一方向に進みながら進路を変更する場合」に関する“合図”について定めたものであり、ハザードランプを感謝の意を表す目的で点灯するケースは想定されていません。 

また、高速道路の渋滞時など、徐行や停止時にハザードランプを点灯する場合はありますが、これも法律で明確に義務づけられているものではありません。現時点では、道路交通法等において「非常時以外にハザードランプを使ってはならない」とする規定は見当たりません。したがって、“サンキューハザード”は少なくとも「法律違反ではない」と言えるでしょう。 

では、「マナー違反」なのかというと、これが難しいところ。 

広辞苑によると、「マナー」とは「行儀、作法」、つまり社会生活を円滑に進めるための心がけや振る舞いのことを指します。相手に不快感を与えない行動であるかどうかが、マナーの是非を左右するのです。 

サンキューハザードに関しては、すでに「マナー」だと考えている人も少なくない一方で、「非常時以外使うべきではない」と考えている人もいます。受け取る側の認識次第で、感謝の意として伝わるか、逆に不適切な行為と受け止められてしまうかが分かれてしまうというのが現状の難しいところです。 

サンキューハザードのメリット

サンキューハザードのメリット
サンキューハザードのメリット

運転中に「ありがとう」を伝える手段としては、会釈や手を軽く挙げるなどのジェスチャーがありますよね。 

しかし、最近の車ではリアガラスや後席のサイドガラスがスモークガラスとなっていることが多く、ドライバーが手を挙げても後方や側方からは確認できないケースが少なくありません。会釈も、ドライバー同士で顔が見える状況でないと伝わりません。そもそも相手がこちらの様子を見ているかどうかも定かではありません。 

さらに、相手の車がトラックなどの大型車の場合は、運転席の高さの違いにより、こちらが会釈をしても手を挙げても、気づいてもらうのは困難です。 

その点、サンキューハザードは相手の顔が見えない状況でも気持ちを伝えることができます。高速道路での合流や、渋滞中の進路変更など、相手車両は自車の真後ろに位置している場面、加えて夜間であればなおさら表情や手の動きは見えません。そんなときでも、ハザードランプの点滅は相手の車内からもはっきり視認できるため、感謝の気持ちが届く可能性が高くなります。 

ひと昔前までは、道を譲ってもらった際に短くクラクションを鳴らして「ありがとう」を伝えるドライバーも多くいました。 

ただし、クラクションは道路交通法第54条で「車両等の運転者は、法令の規定により警音器(クラクション)を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。」と規定されており、たとえ短く鳴らしたとしても、歩行者や周囲の車両、近隣の住民などを驚かせてしまうこともあります。 

サンキューハザードは、周囲への影響を最小限に抑えながら、気持ちを相手方により確実に伝えることができます。ドライバー同士のコミュニケーションが難しい状況でも比較的簡単に相手に気持ちを伝えることができる、非常に便利な手法と言えるでしょう。 

サンキューハザードのデメリット

「割り込みのお詫びツール」として悪用される例も…
「割り込みのお詫びツール」として悪用される例も…

しかしながら、便利であることで、乱用するドライバーも少なくありません。無理な割り込みの後に、まるで免罪符のようにサンキューハザードを点灯させる場面を目にすることもあります。こうした使われ方は、サンキューハザードに否定的な人だけでなく、日頃からサンキューハザードを利用する人たちにとっても、もやもやするものなのではないでしょうか。 

もちろん、車を運転していれば「今のタイミング、相手にとっては迷惑だったかな」と思う運転操作になってしまうことはあり、「ごめんなさい」という意味も込めてサンキューハザードを使う場面もあるでしょう。ただ、「点灯しておけば怒られない」という感覚でサンキューハザードが乱用されているように見えると、その是非を考えさせられます。

マナーとして求めるのはNG…ただコミュニケーションのひとつとしてあってもいいのでは

マナーとして求めるのはNG
マナーとして求めるのはNG

しかしながら、筆者はサンキューハザードを「けしからん」とは考えていません。そもそもルールでもなく、マナーともいいきれないため、道を譲ってもらったら必ず行わなければならないものではありませんし、使用しないからといって失礼だとも思いません。ただ、ドライバー同士のコミュニケーション手段として、あってもいいのかな、と思うのです。 

もちろん、「非常時に点灯させるものなのだから、非常時以外に使うべきではない」という主張は一定の理があります。しかし、道を譲る行為があってからのハザードランプが「ありがとう」という意思表示であることは理解されているでしょう。 

「道を譲ったくらいでの謝意は不要」という意見も目にしますが、運転しているのは人間です。だからこそ、「お先にどうぞ」「ありがとうございます」という道路上で交わされる小さな思いやりは、より円滑で安全な交通に繋がり、渋滞や混雑といったストレスを少し和らげ、双方良い気持ちで運転できるのではないでしょうか。 

とはいえ、「譲ってもらったから急いでサンキューハザードをしなければ」と焦ると、前方不注意となり、事故につながる恐れもあります。また、状況によっては「停止するのかな?」と周囲に誤解を与えてしまう可能性もあります。 

そのため、相手の顔が見える状況であれば、ハンドサインや会釈で謝意を伝える方が無難ですし、相手にサンキューハザードを期待することも控えるべきでしょう。また、安全にハザードランプを点灯させることができない状況なら、心のなかで「ありがとう!」と思うだけでも十分です。譲る側になったときも、サンキューハザードの有無にこだわらず、「きっとありがとうって思ってくれているだろう」と受け取れる、そんな寛容さも持ち合わせたいものです。 

まとめ

ハンドサイン
ハンドサイン

車という密閉された空間にいながらも、ドライバー同士が気持ちを伝え合う手段である「サンキューハザード」。基本的には、ハンドサインや会釈で謝意を伝えるようにし、ハザードランプで「サンキュー」を伝えるときは、周囲に誤解されないよう、手短に点灯をさせるよう心がけましょう。 

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

この記事の執筆者

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

自動車ジャーナリスト。日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。自動車ジャーナリストとして、新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さも伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナ、筋トレなど。

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