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車の280馬力規制とは?馬力規制が日本車にもたらした影響
1970年代から1980年代にかけて、日本の交通事故死者数は急増し社会問題へと発展しました。この状況に歯止めをかける目的で、日本自動車工業会は1980年代末に2つの自主規制を導入します。
その後、国内の交通事故死者数は減少に転じ、一定の効果があったようにも思える自主規制ですが、日本の自動車産業の発展を阻害したという声も。今回は、日本車に課された2つの自主規制とは何だったのか、振り返ってみます。
※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください

現在、国産車でも最高出力304馬力(GRカローラ)や477馬力(レクサスLC500)など、高出力の車がラインアップされています。
しかし、かつての国産車には「最高出力280馬力まで」という自主規制がありました。1970〜80年代の日本は交通事故死者数の急増が問題となっており、国内の各自動車メーカーが高出力化を競い合ったことが、その一因とされたためです。
この自主規制の導入後、国内の交通事故死者数は減少し、一定の効果があったようにも思えます。一方で、280馬力規制が日本車にもたらした負の側面も少なからずあったといわれています。
旧運輸省の指摘を受け、日本自動車工業会が敷いた「280馬力自主規制」

1970~80年代は、日本の自動車産業が大きく発展した時期です。小型で高性能、燃費も良い日本車は海外でも評価されるようになり、国内では好景気に後押しされ、趣味性を重視した車や高性能な車、高級車などが次々と発売されました。各メーカー間の競争も激しく、特にエンジン性能を競い合う状況は加速していきました。
こうした自動車産業発展の一方で、交通事故の急増が問題となりました。内閣府がまとめた統計データによると、交通事故死者数は1970年(昭和45年)に過去最悪の16,765人を記録。これは、近年の死者数(2023年は2,678人)の約6倍にもあたります。
そこで当時の運輸省(現:国土交通省)は1971年、「第一次交通安全基本計画」を策定します。この計画は、1970年の交通事故死者数を5年で半減させること(8,000人以下)を目標としていました。その後も5年ごとの改定を繰り返しながら、道路交通環境の整備、交通安全に関する知識の普及、交通指導取り締まりの強化、自動車の検査および衝突安全基準などが段階的に強化されます。これにより交通事故死者数は、1975年から1987年までは1万人を下回ったものの、1988年には再び1万人を超えました。さらなる方策として旧運輸省が着目したのが「車の馬力を規制すること」でした。そして1989年、「最高出力280馬力まで」という国内メーカーによる自主規制が導入されました。
日本が誇るスポーツカーの多くは最高出力280馬力に

「280馬力」という数値は、1989年に登場した日産のフェアレディZ(Z32)が、最高出力280馬力のV6ツインターボエンジンを搭載していたことが理由だとされています。旧運輸省がすでにこの車の型式認定を行っていたため、日本自動車工業会(メーカー側)が規制上限を「280馬力」としたのです。
その後登場する、トヨタ スープラ(80系)、日産 スカイラインGT-R、ホンダ 初代NSX、スバル インプレッサ、三菱 ランサーエボリューション、マツダ RX-7など、日本が誇るスポーツカーの多くは最高出力280馬力(カタログ表示)でした。
当時の自動車メディアは、工場出荷状態でのインプレッションやサーキットでの比較テストなどを企画し、雑誌やビデオ、DVDなどで多く取り上げていました。筆者も含め、当時のスポーツカーファンはその比較結果をわくわくしながら待っていたものです。
交通事故死者数は減少したが、寄与の度合いは不透明
自主規制の導入後、国内の交通死亡事故件数は年々減少し、7年後の1996年、ついに交通事故死者数が1万人を下回りました。その後も減少は続き、2001年には9,000人、2003年には8,000人を下回ります。
このように、交通事故死者数の低減策として一定の効果があったようにも思える280馬力規制ですが、当時は様々な安全対策が同時に行われていたため、この規制の寄与がどれほどあったのかは明確ではありません。実際、規制導入から15年が経過した2004年に280馬力自主規制が撤廃されたあとも、交通事故死者数は減少を続け、前述のとおり2023年には2,678人まで減少しました。
寄与の度合いは不透明であるものの、280馬力規制によって車が関係する死亡事故が少しでも減ったのであれば、日本の自動車産業にとって良い方策だったのかもしれません。自動車メーカーとしても、事故の直接的な原因はさておき、自分たちがつくった製品で人が亡くなるケースが増えることは、無視できるものではなかったはずです。
ただ、規制があることで、規制のない輸入高級車やスポーツカーとのエンジン性能の差が明白となり、世界に通用し始めた日本車の地位向上を妨げていた側面も考えられるなど、280馬力自主規制には少なからず負の側面もあったといえます。
「メーター表示上限180km/h」の自主規制

もうひとつ、日本車には「速度メーター表示上限180km/h」という自主規制もありました。現在市販されている国産車はすべて、公道で180km/hを超えないよう燃料供給を制御する「スピードリミッター」の装着が義務づけられていますが、この影響で日本車の速度メーターの表示上限は、今も多くの車種が180km/h(軽乗用車は140km/h)に設定されています。この自主規制も、交通死亡事故の増加を抑える目的で導入されました。
ただ現在は、レクサスISが260km/h、マツダ ロードスターは200km/h、スズキ スイフトは220km/h、スイフトスポーツは260km/hと、180km/h表示を超えるモデルも登場しています。また、デジタルメーターが主流となってきたことで「表示の上限」という概念自体がなくなりつつある状況といえます。
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2つの自主規制が日本車に与えた影響

速度メーターに関しては、日本のメーカーは数値以外で高性能を表現する手法を模索しました。その一例が、GRスープラやGR86、GRカローラといった現代のスポーツカーに採用されているメーターです。アナログのスピードメーターの代わりに、レーシングカーを彷彿とさせる大型のタコメーターを中央に配置。シフトチェンジのタイミングの分かりやすさはもちろん、アクセル操作に呼応してダイナミックに動く針が、スポーティな高揚感を演出します。
これらの自主規制は、車種や性能を問わず広く適用され、当時「過剰な出力競争を抑制する」目的を担いました。最高出力という単純な指標での競争が制限された環境下で、国産メーカーは車体設計、制御技術、燃費性能といった「出力以外の価値」を磨く方向へと進化します。特に1990年代後半以降は、環境性能や安全技術の開発が加速し、ハイブリッド車など新たな技術領域が開花しました。
このような動きは、交通安全や環境保護といった社会的要請に応えるものであり、結果として日本の自動車産業は「総合性能」や「品質の高さ」を特徴とする独自の競争力を確立したといえるのではないでしょうか。
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