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オートマのMTモードは飾りじゃない?Bレンジとの違いと賢い使い方

オートマのMTモードは飾りじゃない?Bレンジとの違いと賢い使い方

車を運転していると、シフトレバーの周辺やハンドルの裏側に「+」「-」の表示があることに、気づいたことはありませんか。「触っていいのかな?」「間違って操作したら怖いな」と感じて、これまで一度も使ったことがない、という方も多いかもしれません。

この「+」「-」のレバーで操作できるのが、「MTモード」と呼ばれる機能です。オートマチック車でありながら、マニュアル車のようにドライバー自身が変速を指示できる仕組みですが、その名称から、少し難しそうな印象を受ける方も少なくないでしょう。実際、「何のためにあるのか分からない」「使わなくても困らない」という声もよく聞かれます。

しかし、MTモードは場面に応じて使い分けることで、運転の安心感やコントロール性を高めてくれる、頼れる機能でもあります。本記事では、MTモードとはどんな機能なのか、どのような場面で役立つのかを整理しながら、混同されやすい「Bレンジ」との違いについても、わかりやすく解説していきます。

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

この記事の執筆者

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

自動車ジャーナリスト。日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。自動車ジャーナリストとして、新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さも伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナ、筋トレなど。

※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください

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MTモードとは、オートマ車で「変速を指定」できる仕組み

写真のランドクルーザー250 ZX(ディーゼル車)はシーケンシャルシフトマチック(Mモード)だが、VXのガソリン車ではシーケンシャルシフトマチック(Sモード)
写真のランドクルーザー250 ZX(ディーゼル車)はシーケンシャルシフトマチック(Mモード)だが、VXのガソリン車ではシーケンシャルシフトマチック(Sモード)

「MTモード」とは、シフトレバーを「+」「-」の位置に動かしたり、ステアリング裏に備えられたパドルシフトを操作したりすることで、ドライバー自身が変速のタイミングを指示できる機能のことです。5速ATや6速AT、7速ATといった多段式のオートマチック車(以下、AT車)を中心に採用されており、マニュアル車のようにギア操作を楽しめるのが特徴。クラッチ操作は不要なので、操作を誤ってエンストしてしまう心配もありません。

一般的なAT車では、アクセルの踏み方や車速に応じて、車側が自動的に最適なギアを選択します。一方、MTモードを使えば、「ここで1段下げたい」「このギアのまま加速したい」といったドライバーの意思を、より直接的に車へ伝えることができます。加速や減速を自分の感覚に合わせてコントロールしやすくなるため、運転が「楽しい」「気持ちいい」と感じられる場面も増えてくるでしょう。

なお、小型車に多いCVT(無段変速機)にも、MTモードが用意されている車種があります。ただしこの場合は、実際に複数のギア段が存在するわけではなく、あらかじめ設定された変速比を段階的に切り替える、いわば疑似的な仕組みです。車種によっては「3速」「4速」といった表現が使われることもありますが、あくまで分かりやすさを優先した表示であり、有段式のATと同じ構造というわけではありません。

どんなときに使う?初心者でもわかる代表的なシーン

GRヤリス RZ“High performance”[GR-DAT(8AT・4WD)]
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MTモードが活きる場面のひとつが、高速道路での追い越しです。通常、強い加速が必要なときは、アクセルを深く踏み込むことでキックダウン(自動的により低いギアへ切り替わり、加速力が高まる動作)が起こりますが、ギアが切り替わるまでにわずかなタイムラグが生じることもあります。そんなとき、あらかじめMTモードでギアを下げておけば、加速したいタイミングですぐにパワーを引き出すことができ、レスポンスの良さを感じやすくなります。

また、長い下り坂でスピードが出すぎそうな場面でも、MTモードは役立ちます。下り坂ではアクセルを踏まなくても車速が上がりやすくなりますが、ブレーキペダルを踏み続けると、ブレーキ液が過熱して制動力が低下する「フェード現象」を招くおそれがあり、大変危険です。こうした場面でMTモードを活用してギアを1段、2段と下げ、エンジンブレーキを利かせれば、フットブレーキに頼りすぎることなく、車速を穏やかにコントロールしやすくなります。

もっとも、こうした場面でDレンジのまま走行しても、大きな問題になることはほとんどありません。近年のAT車は制御が非常に進化しており、ドライバーが特別な操作をしなくても、安全かつスムーズな走行ができるようになっています。

正直なところ、使わなくても困らない機能

左:GRカローラ RZ[GR-DAT(8AT・4WD)]、右:GRカローラ RZ(6MT・4WD)
左:GRカローラ RZ[GR-DAT(8AT・4WD)]、右:GRカローラ RZ(6MT・4WD)

正直にお伝えすると、MTモードは「なくてはならない機能」ではありません。強く加速したいときはアクセルペダルを深く踏み込めばよく、減速したいときはブレーキペダルを踏めば十分です。さらに、レーダークルーズコントロールを備えた車であれば、登り坂や下り坂でも車速を一定に保つ制御を車側に任せられる場面もあります。

筆者自身も、MTモードを操作すること自体は好きですが、燃費や効率のために積極的に使っているわけではなく、「使わなくても困らない」と感じているのが本音です。むしろ普段はDレンジで走るほうが気楽で疲れにくく、結果的に安全運転につながりやすいとも考えています。

では、なぜMTモードは多くの車に搭載されているのでしょうか。ここから少し掘り下げていきましょう。

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MTモードが残されている理由

ハンドルの後ろについているパドルシフト
ハンドルの後ろについているパドルシフト

ひとつは、運転状況に応じて「車の挙動を意図的に変えたい」というドライバーの意思に、素早く応えるためです。追い越し時の加速や長い下り坂での減速、さらには慎重な操作が求められる雪道など、ドライバー自身の判断が重要になる場面では、MTモードが頼もしい助けになることもあります。

もうひとつは、ドライバーが車を自分でコントロールしている感覚を味わえることです。ギアを下げた瞬間にエンジン音が高まり、加速や減速の変化をダイレクトに感じられる。これはマニュアル車で得られる運転感覚に近く、運転が好きな人にとっては「車からの反応が返ってくる」こと自体が楽しさにつながります。

とくに、ハンドルから手を離さずに操作できるパドルシフトは、見た目の面でもスポーティな印象を強めてくれる装備です。一般的に、、スポーツグレードにはパドルシフトを採用する車種が多く、メカニカルな操作を楽しめる点も含めて、車好きの心をくすぐる要素といえるでしょう。

ただし、MTモードを使う際にはいくつか注意点もあります。まず意識したいのが、エンジン回転数を上げすぎないこと。高回転の状態で走り続けると、エンジンに負担がかかるだけでなく、アクセル操作に対する反応が過敏になり、車の動きがギクシャクしてしまうことがあります。同乗者が不快感を覚えたり、車酔いにつながったりする可能性もあるため、状況に応じて使いどころを見極めながら活用することが大切です。

MTモードと燃費の関係

GRヤリス RZ“High performance” GR-DAT(8AT・4WD)の内装
GRヤリス RZ“High performance” GR-DAT(8AT・4WD)の内装

燃費の面でも、基本的にはDレンジに任せたほうが有利です。メーカーはさまざまな走行シーンを想定したうえで、燃費性能を最大限に引き出す変速プログラムを設定しており、多くの場合、ドライバーが手動で操作するよりも効率的な制御が行われます。

とはいえ、MTモードを使うと燃費が大きく悪化するのかというと、そうとも言い切れません。結局のところ「使い方次第」です。たとえば、長く続く加速感を味わうために低いギアでエンジンを高回転まで回し続けたり、不必要にギアを頻繁に上げ下げしたりすれば、当然ながら燃費は悪化します。反対に、下り坂でMTモードを使ってエンジンブレーキを積極的に活用し、無駄なブレーキ操作を減らすことで、結果的に効率のよい走りにつながるケースもあります。

それでもやはり、燃費を最優先に考えるのであれば、基本は「Dレンジ任せ」がおすすめです。MTモードは燃費向上のための機能というよりも、運転状況に応じて走りを調整・補助するための「アシスト機能」と捉えるのが適切でしょう。

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Bレンジとの違いは?混同しやすいポイント

MTモードとよく混同されがちなのが「Bレンジ」です。Bレンジの「B」はブレーキ(Brake)を意味しており、主にエンジンブレーキを強めることを目的とした機能です。とくに、有段ギアを持たないCVT車に多く採用されており、先日登場した新型RAV4のエレクトロシフトマチック搭載車(Z・GR SPORT)にも、MTモードではなくBレンジが備えられています(※)。
※新型RAV4のAdventureでは、マニュアル感覚のシフト操作を楽しめるシーケンシャルシフトマチック(Sモード)が標準装備となります

RAV4のエレクトロシフトマチック<一方向操作方式>
RAV4のエレクトロシフトマチック<一方向操作方式>

CVT車でBレンジを選択すると、車側が変速比を自動的に調整し、常に減速寄りの状態、つまり制動力がかかったような走行状態が続きます。MTモードのようにドライバーが任意で段数を選ぶことはできませんが、そのぶん操作はシンプルで、強いエンジンブレーキを安定して使えるのが特徴です。

つまりBレンジは、「減速専用」のポジション。加速や走りを楽しむためのMTモードとは目的が異なり、下り坂などで安全に速度を抑えるための機能と理解しておくと、使い分けがしやすくなります。長い下り坂など、スピードが出やすい場面では、積極的に活用したいレンジといえるでしょう。

MTモード

Bレンジ

主な目的

加速・走りのコントロール

エンジンブレーキの強化(減速)

操作

ドライバーが段数を任意指定

選択するだけで自動制御

採用が多い車

多段式AT車

CVT車(とくにハイブリッド車)

活躍シーン

追い越し・スポーティな走行

長い下り坂・速度抑制

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知らなくても困らない、でも知っていると楽しい機能

AT車でありながら、必要なときに「運転の主導権」をドライバーが取り戻せること。これこそが、MTモードの存在価値です。ここまでご紹介してきたように、MTモードを使わなくても、日常の運転に支障が出ることはありません。それでも、その仕組みや役割を知っておくことで運転の幅が少し広がり、車の楽しみ方のひとつである「操る楽しさ」を味わえる場面も出てくるはずです。

普段はDレンジで気楽に走り、余裕のあるときに少しだけMTモードを試してみる。そのくらいの距離感で付き合うのが、MTモードを上手に活かすコツです。まだ一度も操作したことがないという方も、ぜひ機会があれば試してみてください。運転に対する価値観が、少し変わるかもしれませんよ。

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

この記事の執筆者

吉川 賢一(よしかわ けんいち)

自動車ジャーナリスト。日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。自動車ジャーナリストとして、新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さも伝えるため執筆中。趣味は10分の1スケールRCカーのレース参戦、クルマ模型収集、サウナ、筋トレなど。

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