試乗記・レポート
シルビア乗りによる「GR86 by TOM’S×KINTO」レンタカー試乗レビュー
「糸井さんって、長くシルビアに乗っていますよね。MOTORSPORT by KINTO(MOSKIN)のスポーツカーレンタル(※)で取り扱っているGR86 by TOM’S×KINTOを試乗して、思ったことや感じたことを記事にしてみませんか?」とのお話をいただきました。
※GR86やGRヤリスなど、スポーツカーをマニュアル(MT)で体験できるレンタカーサービス
「シルビア」に乗っていることで、お仕事がいただけるなんて、ありがたいことです。
※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください
こだわりはマニュアルの後輪駆動車、だからハチロクも気になる!
はじめに軽く車歴をお話しすると、免許証を取得後、最初に購入したのはホンダの「プレリュード(BA)」。次いで同じホンダの「シビック(EG)」、日産「マーチ(K11)」、そしてシルビア(S13、S14、S15)と続きます。シルビアはすべて自然吸気モデルで、最後のS15は1999年に購入。それから26年が経ちました。

S13、S14を含めると30年以上、シルビアを乗り継いではいるものの、決して“シルビアであること”に、こだわりを持っているわけではありません。こだわっているのは“マニュアルの後輪駆動車”で、“使い勝手がいい”こと。
実際、2012年にトヨタ「86(ZN6)」が登場したときには買い替えを検討して、販売店へ試乗にも行きました。その結果、「感触的にシルビア(S15)とよく似ているし、このままでいいかな」と、乗り続けることに決めたんですね。
といっても、決して86が悪かったわけではありません。実は、シルビアにはそれなりに手を入れていて、吸排気、LSD、クラッチ、フライホイール、スタビライザー、サスペンション、ブレーキ、タワーバーなどを社外品に変えていたんです。

そんな少なくないお金を注いだシルビアと、純正状態で「よく似てる」と思ったんですから、86はとてもいい印象でした。それから86とGR86は、常に乗り換えの最有力候補に居続けるものの、決定打がないまま今に至っています。
その上で、今回のお声がけ。しかも、トムスの手がけたチューニングGR86!公式WEBサイトで確認したところエンジン周りはそのままで、足回りと駆動系に手を入れているとのこと。いや、イイっすね!
手を入れる方向性がS15と一緒で、かなり好みの内容。楽しみに試乗当日を迎えました。
年甲斐を気にするお年頃に、とても嬉しい自然でスマートなドレスアップ
初めて目の当たりにしたGR86 by TOM’S×KINTO。第一印象は、「派手なドレスアップは、もう恥ずかしい」ジジィでも、素直に「格好いい!」と感じるスマートさ、です。

ドレスアップされているのはフロントディフューザーとサイドディフューザー、トランクリッドスポイラー、そしてアルミホイールといったところ。いずれもトムスのエアロパーツで、仕上がりも純正のように自然です。


内装は、ステアリング表皮とイグニッションスイッチがGR86と違うものの、他は同じでしょうか。聞けばGR86 by TOM’S×KINTOは、車のサブスク「KINTO」で利用・返却されたGR86の中から、程度のいい個体を厳選してベースにしているとのこと。
たしかに内装の質感や匂いから新車っぽさは感じないものの、隅々までとても綺麗で、大切に乗られた個体がベースになっていることがうかがえました。
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個人の好みでいえば、メーターはパッと見で識別できる機械式の方が好ましいのですが……。いや、歳のせいで液晶が見づらいとか、そういう問題じゃなくて(そういう問題もありますが)、これはもう避けようのない時代の流れ。
シートに座ってイグニッションスイッチをオン……しかし、始動せず。そう、イマドキのマニュアル車は、「クラッチスタートシステム」という安全装置が義務付けられていて、クラッチペダルを踏んでいないとエンジンがかからないんですね。

チューニング車への偏見を壊してくれた、キャビンの静かさと乗りやすさ
「TOM'S BARREL」マフラーの乾いた排気音を耳に、試乗開始。まずは首都高へ向かいます。乗り味や乗り心地を意識して運転すると、あらためてGR86の運転席がスポーツカーとして考えて設計されたものだと感心させられました。

ダッシュボードとボンネットは低い位置で直線的、そのおかげで前方の視界は広々し、見切りも楽そう。左右や後方の視界も十分に確保され、見づらさに困ることはありません。
ショートシフトのシフトフィールは良く、シフトダウンでもスコッと1速に入ります。ただ、僕の体型のせいか、それともシルビアでのクセが影響しているのか?シフトチェンジの際、肘がセンターコンソールボックスにゴツゴツと当たるのが気になりました。とはいえ、この辺りは、自分で所有すれば慣れるものでしょう。

チューニング車ということで、乗り心地の悪さやキャビンへの音の進入といった“ハードな環境”を警戒して、身構えていたのですが、これはいい意味で裏切られました。
サスペンションは「Advox Sports」、タイヤはブリヂストンの「POTENZA RE-71RS」で、乗り心地はGR86と比べると、たしかに硬め。
でも、それは「タイヤからのインフォメーションがしっかりと伝わる」というレベルで、“硬い”というよりも“質が変わった”と表現する方が適切かもしれません。個人的には楽しさと心地よさを感じる、好ましい硬さです。
また、走行中のキャビンが驚くほど静かだったことも意外でした。排気音やロードノイズの進入、こもった音が気になることはありません。

一番、耳についた音は「キーキー」というブレーキの鳴きですが、不快や耳障りというほどではなく、他が静かだから気付くといった程度。ブレーキをかけた時のフィーリングから一般的なストリート向けより、少し高熱に振ったブレーキパッドが入っているのではと感じました。
高級セダンのような快適さは望むべくもありませんが、「運転することの楽しさを求めたクルマ」として考えると、とてもいいバランスに調整されているのではないでしょうか。
素直で自然なフィールとダイレクトなコール&レスポンスが、最高に気持ちいい!
操作性は後輪駆動車らしく、とても素直。カーブの手前で減速して進入すると、こちらが思い描いた通りに回頭して曲がり、予想した通りの旋回力を身体に感じさせてくれます。
カーブを抜け、ステアリングを戻しながらアクセルをジワリと踏み込むと、これまた寸分違わず思い描いた通りにコースを走り、予想した通りの力で車体を押し出してくれます。
いやもう、素直さと最適なコール&レスポンスが、すごく気持ちいいッスわー!

僕がクルマを運転していて一番、楽しさを感じるのは、操作に対してクルマが思い描いた反応をくれ、間違った操作には、わかりやすく「それは間違いだよ」って反応をくれたとき。
こっちのフィーリングと違う反応や、なんらかのデバイスによる介入があると、違和感で“運転している世界”から一瞬で覚めてしまうんですね。
GR86 by TOM’S×KINTOは終始、こちらの操作をきめ細かく拾い、しっかりと正確に返してくれる。足回りや駆動系のチューニングは、そのままコール&レスポンスのダイレクトさに繋がっていて、最後まで“運転している世界”への没入感から覚めることはありませんでした。

ワインディングロードのような強くコール&レスポンスを求められる道なら、もっと刺激的で、積極的な楽しさと充足感が得られるのでしょうね。
GR86 by TOM’S×KINTOを知っちゃったからこそ…
首都高を降り、GR86 by TOM’S×KINTOを返却。とても楽しい時間を過ごせました。もし次の機会があったらワインディングロードを試してみたいですね。
さて、シルビアに戻ってエンジンを始動。大きくてがさつな排気音。そして走行すると、GR86 by TOM’S×KINTOを運転していたときのダイレクト感が薄まり、ゆるさが伝わる。ヤレもあって、シルビアの程度はGR86 by TOM’S×KINTOと比べられないほど悪い。けれど……。
このゆるさは、すごく落ち着くんだな!
“実家感”っていえば、この「気を緩めていい」って気持ちが伝わりますかね。

シルビアのゆるさに、ずいぶんと緊張した状態でGR86 by TOM’S×KINTOを運転していたんだなと、気付かされます。
うーん……。GR86 by TOM’S×KINTOは、掛け値なしにいいクルマで、格好も良くて、しかも好みの調整が最初から施されているんだけど……。
1台で、すべてを熟すクルマを求めるなら、シルビアくらいの“ゆるさ”があった方が気張ることなく、ちょうど良いんだろうなぁ。
けど、消耗部品の高騰を考えると、そう長くシルビアに乗っていられない気もするし、ノーマルのGR86って選択肢もあるけど、結局はGR86 by TOM’S×KINTOのように手を入れちゃうと思うしなぁ……。

TOM'S TOKYO SHOWROOMにあった「GRカローラ」と「GRヤリス」も気になるけれど…
繰り返しになりますが、GR86 by TOM’S×KINTO、本当にいい車です。だからこそ……。知っちゃったからこそ……。
こんな感じで、ずっと乗り換えに悩む気がするなぁ!
(取材・文:糸井賢一 企画・編集・撮影:木谷宗義/type-e)
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