試乗記・レポート

トヨタ新型プリウスの後部座席は狭くない!視界も良好とデザインと使い勝手を両立できた理由を開発責任者にインタビュー

トヨタ新型プリウスの後部座席は狭くない!視界も良好とデザインと使い勝手を両立できた理由を開発責任者にインタビュー

2023年1月10日に発売以降、爆発的な売れ行きを見せる新型プリウス。「Hybrid Reborn」というキャッチコピーにふさわしい、全方位での進化を遂げました。特に注目なのがデザイン。カッコよくなったと評判な半面、車高が低くなったため、室内空間…特に後部座席は狭くなったのかと思いきや、さまざまな工夫により旧型以上の開放感と使い勝手を実現しています。

本記事では、新型プリウスの魅力や、開発にあたってこだわった所を開発責任者の大矢賢樹主査にインタビュー。1.8Lと2.0Lのキャラクターの違いなど走りへのこだわりのほか、後部座席含む使い勝手の進化など、プリウスの魅力に迫りました。

※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください

※新型プリウスUグレード正面写真
※新型プリウスUグレード写真

新型プリウス、1.8Lモデルと2Lモデルはどう作り分けたのか


※新型プリウス開発責任者、大矢賢樹主査
 
ここからは、新型プリウス開発責任者、大矢賢樹主査のインタビューを掲載。まずは走りを中心に開発秘話についてお届けします。

――1.8Lと2.0L、どのような作り分けをしたのですか?

大矢主査:
2.0Lモデルは、193ps(システム最大出力)とハイパワーなパワーユニットを積んでいるので、それに見合うような走りを与えています。1.8Lモデルも、第5世代の新しいパワーユニットなので進化はしているんですが、より燃費を気にされるお客様向けとなっています。両方ともベースのポテンシャル自体は第2世代TNGAを採用しているので、レベルは上がっています。どちらに乗っても進化を感じていただけると思います。

――なるほど。第2世代TNGAがかなり重要な役割を果たしているようですが、第1世代と比べてどんな点が進化したのですか?

大矢主査:
一番手を入れたのが「軽量化」と「高剛性」です。この2つの性能を上げることで車のポテンシャルが上がります。運転中に車を左右にハンドリングした時、ボディの先端(前方)が横曲げ(進行方向ではなく横方向に力がかかる)をおこすことが第1世代TNGAの開発を通じて分かったんです。そこで、横曲げに対するボディ剛性を高めることで車のレベルを上げる、ということをやりました。
※高剛性ボディ(プロトタイプ)。剛性を上げるといいことがたくさんあるようだ

――ボディの剛性を上げると車の性能全部に効いてくる感じなのですか?

大矢主査:
そうです。あとは足回りもジオメトリ―(車の動きの設計)を変更したり剛性を上げたりなど、できることを全て足し合わせ組み合わせ進化させたのがTNGA第2世代です。なので、どんなパワーユニットが組み合わされても基本的には以前よりいい車になります。そのうえで、1.8Lと2.0Lの味付けを変えていきました。

加速感が印象的な1.8ℓモデル。排気量は先代(50系プリウス)と同じなのになぜ?

――1.8Lは先代から排気量は変わっていませんが、試乗すると全然違いました。気持ちいい加速感が印象的だったのですが、なぜでしょうか?

大矢主査:
第5世代のパワーユニットになって、エンジン本体はあまり変わってないのですが、組み合わせるモーターや電池などが変わっています。燃費を犠牲にせずに出力を上げるということをやっているので、ポテンシャルは上がっていますよ。1.8Lでも十分気持ちいい走りを体感いただけると思います。
※新型プリウスZグレード走行シーン。遠くから見ると歴代プリウスの面影を感じるデザイン

――先ほど車の味付けの話が出ましたが、走りでこだわった部分はどこでしょうか?

大矢主査:
ハンドルを切った時の車の連続した動きは今回一番こだわったところです。「走る」「曲がる」「止まる」の動きがシームレスに繋がるようになっています。車の動きのつながりの良さをぜひ体験していただきたいです。

――先ほど私も試乗した際に車を少し左右に振ってみたのですが、車がフラットな印象を受けました。

大矢主査:
フラット(ライド)な車になりました。車両姿勢がより安定していると思います。1.8Lと2.0Lはエンジンの重さも違って、1.8Lの方が軽いんですね。軽快さやキビキビ感が出てくるのは1.8Lの方だと思います。

――確かに、軽さというか、反応のよさを感じました!!

大矢主査:
パワーユニットも軽いですし、タイヤも17インチと軽いので、全体的な軽さ感は1.8Lの方が出ていると思います。気持ちよく走りたい人は1.8L、もっとパワーが欲しいという人は2.0Lでしょうね。新しいプリウスで表現したかった世界観は2.0L搭載車両の方で実現しましたが、1.8Lの方もその魅力はスポイルせず、1.8Lユニットの特性を活かした走りになっています。なので、1.8Lは2.0Lとはまた性格の違う車になっていますね。
※新型プリウスUグレード。17インチタイヤを装着
※新型プリウスZグレード。19インチタイヤを装着

――今回、タイヤが大きくなったのが印象的です。タイヤが大きくなると燃費が悪化するなどネガティブな影響もあると思うのですが、どのように開発を進めたのですか?

大矢主査:
おっしゃる通りで、タイヤを大きくすると燃費は悪くなってしまうので、実はタイヤの幅を少し細くしました。細くすることで転がり抵抗を下げて、燃費を稼いでいます。これにより、見た目のカッコよさと燃費性能を両立できました。

前方視界も良好!デザインで使い勝手を犠牲にしなかった新型プリウスは開放感のある室内空間を実現

――カッコよくなったことで使い勝手の部分に影響が出ていないか個人的に心配しているのですが…

大矢主査:
全高が低くなったので、外観だけを見ると室内空間が狭くなったのかな?と思われるかもしれません。ただ、乗ってみると開放感がある空間になっていると思います。インパネを低くした分、広々とした空間に感じてもらえると思います。Aピラー(フロントガラスと屋根をつなげる柱)の内側の色に注目してほしいのですが、実は黒とライトグレーの2色を使い分けています。黒を一部に使うことでピラーを細く見せています。あと、フロントガラスに近い部分が白だとフロントガラスにAピラーが映ってしまい視界が狭くなるのですが、そこを黒にすることで視界を広げる効果も狙っています。
※死角を減らすための三角窓がこちら

――運転席に乗った際に広々とした印象を受けたのは、そういうこだわりがあったからなんですね。Aピラーが前方にあるからかと思っていました。そのおかげかわかりませんが、視界のよさも印象的でした。

大矢主査:
実はそこも工夫した部分なんです。ドライバーにとって見たいところが見えるように、まず三角窓の位置を決めました。それを邪魔しないようにミラーの位置などをレイアウトしていきました。Aピラーは前方にあるのですが、ドライバーの見たい所は見えるようにと。
※赤枠で囲った部分がAピラー

――なるほど。安全のために見えなきゃいけない位置はちゃんと見えるようにしていると。

大矢主査:
はい、そういう部分はこだわって作っています。カッコいいけど運転しにくい車になってはダメなので。

――視界に関連する話ですが、従来のセンターメーターではなくなった理由はなんですか?

大矢主査:
今回スポーティに車のキャラクターを振ったこともあり、できるだけ運転に集中してもらえるようスピードメーターをあの位置に設定しました。
※スピードメーター。地図を映しているワイドディスプレイよりかなり奥に配置されている

――現在の位置(ハンドルの先の方)にあると何がいいのですか?

大矢主査:
これまでのプリウスの特徴であるセンターメーターや、ほかの一般的な車のスピードメーターもそうなのですが、視線移動がちょっと多いと考えています。運転している際の視線の先にスピードメーターが見えるよう、スピードメーターをあの位置を決めました。

細部にまで「おもてなし」の心が。カップホルダーにも秘密があった

――どうしてもデザインに注目してしまうのですが、安全や使い勝手の部分にもしっかりこだわっているんですね。

大矢主査:
はい。そういう部分にもぜひ注目していただければと思います。気が付きました? 実はカップホルダーにも工夫を施しているんですよ?
※逆ハの字に傾いているカップホルダー

――カップホルダーもですか?見た感じは普通のカップホルダーに見えましたが…

大矢主査:
カップを置くとわかるんですが、実はちょっとだけ逆ハの字になっています。カップホルダーの位置を決める際、まずは縦に2個配置することを検討したのですが、縦に並ぶと助手席の人とどっちを使うか喧嘩になっちゃうじゃないですか(笑)。なので、横に並べたんですよ。で、横2個の場合、アメリカとかだと大きいカップを置くケースが多いのですが、その際干渉することがありまして。なので、逆ハの字にしてカップが互いに干渉しないようにしました。

ほかには、シフトノブ横にスマートフォンを収納できるスリット型のトレイがあるのですが、センターコンソールボックス側に溝を入れています。センターコンソールボックス内に充電用USB端子があるのですが、充電ケーブルをその溝を通してスマートフォンに繋げられます。これもあると便利だと思いますよ。
※これがケーブルを這わせるためのスリット

新型プリウスの後部座席には、広く感じるための工夫がたくさん

※新型プリウスUグレード後部座席写真

――ちなみに、後席の工夫は何かありますでしょうか?

大矢主査:
2つやったことがあります。ひとつ目はシートの背もたれの角度です。先代より3度寝かしました。それによって頭上空間(ヘッドクリアランス)もとれるようになっています。背もたれが立っていると腰回りに負担がかかりますが、3度寝たことでよりくつろげるシートになっています。

――そんな工夫があったんですね。

大矢主査:
もうひとつは、後部座席に座った際、顔の横にガラスが来るようにしています。新型プリウスのリヤのドアノブの位置はC-HRと同じくリヤドアパネルの上にあります。このままだと顔の横にはガラスがない状態になるわけですが、ドアノブの位置をできるだけ後方に配置することで顔の横をガラスにできました。なので、圧迫感が減っていると思います。
※新型プリウスUグレードの後席ドアノブ。顔の横にもガラスが来るよう工夫が施されている

――車高を低くしたけど、後席の開放感を犠牲にしなかったということですね。

大矢主査:
狭くはなったんですけど、感じないよう工夫したということですね。膝前の空間も先代と同じか数ミリ広くなっています。プリウスは後席もしっかり使える車ですので。

――プロドライバーの中山雄一さんが「先代は後席に座ると頭が付いていたけど、新型だとつかない」と仰っていたのは、そういった工夫があったからなんですね。そういえば、新型車の大型化が進む昨今ですが、プリウスはそこまで大きくなっていませんよね?

大矢主査:全幅は先代から20mm広くなって1,780mm、全長も25mm長くなって4,600mmとなっています。

――同じセグメントの車は全幅1,800mm近い車も多いわけですが、1,780mmに抑えた理由ってあるんですか?

大矢主査:
東京都内の駐車場を想定しています。ある地域だと1,780mm以下(制限)っていう駐車場も結構ありまして。デザイン側からは、もっと幅広くっていう要望はあったのですが、1,800mmあると厳しいという事情も鑑みてこの幅に抑えました。全高が低くなったおかげで、これでも十分ワイド&ローに見えると思いますよ。

――小さい方が助かる場面、多いです。

大矢主査:
北米市場のことを考えるともうちょっと広くてもいいかもしれませんが、都内で使うことを考えると…1,800mmを超えると使えないタワーパーキングとか結構出てきちゃうので。マンションの機械式駐車場も制限が多いことを考えると、小さい方が。ただ、あまりにも小さいと格好が悪くなってしまうので、せめぎあいでした。落ち着いたのが1,780mmという数字です。

――日本人として、日本で使いやすい車は歓迎です。新型プリウスのこだわり、解説ありがとうございました!!

※新型プリウス、プロトタイプ走行シーン

新型プリウスの魅力を、YouTubeとGRドライバーインプレッション記事で発信

KINTO編集部では、新型プリウスの魅力を深堀すべくロケを敢行。富士スピードウェイにて、GAZOO Racing所属のプロドライバーに新型プリウスの1.8Lハイブリッド、2.0Lハイブリッドを試乗比較してもらったほか、先代プリウスとの試乗比較も行いました。プロドライバーが語る新型プリウスの魅力に注目です。

ロケの様子をYouTubeにて公開しています。

GRドライバーのインタビューはこちらから。

本記事では掲載できなかったこぼれ話については、以下の記事もあわせてご覧ください。

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KINTO Unlimitedは新型プリウスUグレードよりスタートし、2024年1月からヤリス、ヤリス クロスでも提供が始まりました。お客様からの反響などを踏まえて、今後、ほかの車種にも拡大していく予定となっています。

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