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「ランドクルーザー70」ジャーナリスト人生とオーバーラップする40年超のロングセラー/森口将之【リレー連載:記憶に残るトヨタ】
憧れの「2000GT」から最新の「プリウス」まで、取材でさまざまなトヨタのクルマに乗ってきました。その中で思い出に残っている車種として挙げたいのは、ヘビーデューティSUVの「ランドクルーザー70(ナナマル)」です。
ご存知の方もいると思いますが、ナナマルは1984年以来、40年以上作り続けられているロングセラー。一方の僕は1985年に自動車メディア業界に入り、今も仕事をさせてもらっています。つまり、ヒストリーがほぼオーバーラップしているのです。
1984年 ランドクルーザー70
しかも、僕が最初に在籍したのは、当時はRV(レクリエーショナル・ビークル)と呼ばれていた、SUVやミニバンの専門誌の編集部。おかげで仕事場を変わってからも、このときの経験を買われて、人より多めにSUVに触れてきました。
そのこともあって、ナナマルはデビュー直後から、進化をするたびに触れてきています。編集部時代の記憶を呼び戻すと、このクルマ独特の歩みに共感するのです。
モータージャーナリストをはじめ、クルマにかかわる人たちなら、誰しも記憶に残るトヨタ車があるもの。当シリーズは、それぞれの思い出に残る1台のトヨタ車に焦点を当て、振り返っていくリレー連載。
※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください
当時から「新しくなかった」ナナマルのメカニズム
実は初期のナナマルは、デビューしたてなのに古さが目立ちました。サスペンションは前後とも板バネを使ったリジッドアクスルで、3.4リッター4気筒ディーゼルエンジンはトラック用。しかも、商用車登録のみでした。
これに対して、少し前に登場していた三菱「パジェロ」は、ガソリン/ディーゼルともにエンジンは乗用車用を使い、フロントサスペンションを独立懸架としたうえ、乗用車登録仕様もいち早く導入していました。

ナナマルも、AT(当時は4速)やパワーステアリングは用意してはいましたが、そこそこのオフロード性能を備えつつ、オンロードをセダン並みにこなせるパジェロとの差は歴然としていたのです。
トヨタも黙っていたわけではなく、フレームを軽量化して乗用車用の2.4リッター・ディーゼルターボエンジンを載せ、サスペンションは前後ともコイルのリジッドアクスルとしたモデルを、「ランドクルーザーワゴン」として発売しました。これが「ランドクルーザープラド」に発展していきます。

さらにナナマル自身も、1990年のマイナーチェンジで、エンジンを新設計の3.5リッター直列5気筒と4.2リッター直列6気筒に積み替えると、その後の10年間で、4ドアボディの追加、フロントサスペンションのコイルスプリング化などを実施しました。
新世代ディーゼルエンジンとコイルスプリングのおかげで、乗り味は格段に洗練され、4ドアの登場で使い勝手も向上しましたが、21世紀に入るとディーゼルエンジンのNOx・PM法の影響を受け、2004年に国内向けの販売を終了してしまいます。
2014年に再販、さらに2023年に再々販へ
しかし、10年後の2014年、今度は4リッターのV型6気筒ガソリンエンジンに5速MTを組み合わせた仕様が、4ドアのバンと日本初登場になるピックアップでカムバックします。

フロントノーズとフェンダーが一体化し、ヘッドランプが角形になったこのモデルは、ナナマル30周年を記念したもので、約10カ月の限定販売でしたが、シートが格段に良くなり、滑らかなガソリンV6エンジンのおかげもあって、快適性はさらにアップしていました。
これに続いて2023年、日本では2度目の再販(再々販とも呼ばれている)として登場したのが現行型で、ナナマル初の乗用車登録(3ナンバー)になったことが最大のトピックでした。

エンジンは4気筒ディーゼルターボに戻ったものの、回り方は昔とは別次元の滑らかさ。トランスミッションが6速ATのみとなったこともあり、2.8リッターでも十分な加速を示してくれます。
とはいえ、頑丈なラダーフレームに前後リジッドのサスペンション、パートタイム式4WDという基本構成は、ボディの骨格ともども40年間不変です。道なき道を踏破し、生きて帰ってくるという精神もまた、変わっていません。「商品」である以前に、「道具」であると言ってもいいでしょう。

そんなクルマが、自分が自動車メディアに関わりはじめてからずっと作り続けられている。安全規制や環境規制など、自動車を取り巻く情勢が年々厳しくなっていく中で、すごいことです。
それに揺るぎない思想をバックボーンに据えつつ、時代の変化に確実にアジャストしていくというのは、多くの人が憧れる生き様ではないでしょうか。ナナマルの魅力は、そういったところにもあるような気がするのです。
どのナナマルがいちばん好きか?
ここまで書いてきたように、ナナマルは40年間、何も変わらなかったわけではなく、パワートレインやサスペンションはアップデートを繰り返してきています。となると、どの時代の70がいちばん好きか、という議論も出てくるでしょう。
多くの人に勧められるのが、現行型であることは言うまでもありません。乗用車登録というのは大きいし、4気筒ディーゼルターボに6速ATの組み合わせは、エコとイージードライブを高度に両立しています。

最初のほうで書いたように、ナナマルはそもそも4気筒ディーゼルでスタートしているし、その前のランドクルーザー40(ヨンマル)も4気筒ディーゼルが主力でした。なので、ヒストリーで見ても、正統的な後継車と言えるわけです。
逆に2004年に日本向けの販売が終了する前のディーゼル車は、東京暮らしの僕は、そのままでは登録ができません。
マフラーにDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)などを装着し、PMやNOxを低減し、排ガス試験に合格すれば登録できるそうですが、100万円以上の費用がかかるとのこと。その点でも、ディーゼルのナナマルに乗るなら現行型になります。
でも、僕はそういった状況を知ったうえで、ひとつ前のナナマル、つまり唯一のガソリンエンジンをMTで操るモデルをチョイスしたいと思っています。
「ガソリン+MT」の再販モデルを選ぶワケ
あの頃は10年間、日本で新車のナナマルが買えませんでした。だからこそ、復活を果たしたことに特別な感慨がありました。しかも、古臭くなってはおらず、洗練の度合いもアップ。それでいて、操る楽しさにあふれていました。
ガソリンエンジンというと、ディーゼルと比べて低回転のトルクが細く、オフロードでは扱いにくいというイメージを持つかもしれません。でも、それはチューニング次第であることを、大きめの石がごろごろ転がった、いかにも走行抵抗が大きそうな河原で思い知らされます。

4WDのローレンジをセレクトすれば、アイドリングの状態で、アクセルを踏まずとも、着実に前進してくれたのです。これは本当に驚きでした。
クロスカントリー4WDのパイオニアと言えるジープ「ラングラー」は、今でこそ2リッター4気筒ターボエンジンも選べますが、それまでは大排気量の6気筒ガソリンエンジンを搭載していました。
僕が所有した唯一のアメリカ車でもある「チェロキーXJ」も、4リッター直列6気筒エンジンを搭載していました。上は4,000回転を超えると苦しそうになる一方で、アイドリング付近から太いトルクをじんわり発生してくれて、「さすがジープだ」と思ったものです。それと同じような感動が、ナナマルのガソリンエンジンには詰まっていました。

自然吸気ガソリンエンジンとMTのコンビは、軽いこともメリットです。現行型と比べると、200kg近く軽くなっています。多くはノーズまわりの違いでしょう。さきほどの河原では現行型も走らせましたが、動きがまったく違いました。これもまた、操る悦びにつながるのです。
ノーズとフェンダーが一体化して、角形ヘッドランプを据えた顔つきは、70らしさが希薄だと感じる人もいるでしょう。でも、個人的にはそんなさりげなさもまた、好みだったりします。
2026年5月現在、新車のナナマルは、トヨタのウェブサイトによると「生産を休止させていただいております」とのことで、中古車にはプレミアが付いています。僕がチョイスしたガソリン仕様も、そこまでではありませんが、新車当時より高くなっています。
そんな状況でもあるので、万人に勧められるクルマというわけではありませんが、もし自分がナナマルを1台選べる立場だったら、やはり「ガソリン+MT」の30周年モデルにするでしょう。
(文:森口将之 企画・編集:木谷宗義/type-e 写真:トヨタ自動車)
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