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「車中泊」の達人に聞いた! 車内で快適に過ごすためのアイテム&ノウハウ

「車中泊」の達人に聞いた! 車内で快適に過ごすためのアイテム&ノウハウ

ここ数年でじわじわと関心を集めてきた「車中泊」の注目度が、コロナ禍でさらにアップ。クルマさえあれば簡単にできるとあって、“車中泊ビギナー”が増えているようです。でも、「クルマさえあればできる」とはいえ、そこにもノウハウはありますし、トラブルを起こさないためのルールやマナーもあります。
 
そこで、車中泊しながら取材のために全国を走り回っているという車中泊の達人に、車内で快適に過ごすためのノウハウを語っていただきました。

<車中泊の達人>
重森大さん

(写真:木谷宗義)

中古車雑誌の広告制作、記事制作を経てライターとして独立。自動車関連のほか、携帯電話からエンタープライズまでIT方面の広告や記事を多く執筆。趣味は激安車の購入で、オークションサイトを物色する日々。ITを活用した地方活性化に興味を寄せており、車中泊で日本国内を走り回っている。
https://note.com/shigemoridai

車中泊は「少人数」かつ「長距離」の旅に

筆者は幼い頃から家族で車中泊旅をしてきて、自身が家族を持ってからもレジャーに仕事に車中泊旅を続けている。もちろん、宿泊場所としてホテルや旅館を使うときもある。まずは、どのようなシチュエーションが車中泊に適しているのか、そこから整理していこう。

もっとも適しているのは、長距離移動時の仮眠だ。高速道路のサービスエリアやパーキングエリアは、本来そのために設けられている。

設備の充実した大型サービスエリアも増えている(写真:PIXTA)

宿泊施設を使う場合との最大の違いは、行程や体調に合わせて好きな時間に休んで、好きな時間に出発できること。

これにより柔軟な移動予定を立てることができ、なおかつしっかり休憩することで安全な旅を楽しめる。また、目的地付近で仮眠を取れば、朝からたっぷり遊ぶこともできる。またペットを伴う旅も、宿泊施設の利用が難しいため車中泊が似合うシチュエーションのひとつだ。

重森さんの愛犬、あきちゃん(写真:重森大)

一方で、車中泊が適していないシチュエーションもある。たとえば、夏のレジャーには向かない。狭い車内に人間が1人か2人いるだけで、案外熱を持つものだ。網戸を完備したキャンピングカーでも、夏の平地での宿泊は寝苦しくて疲れが取れない。ある程度、標高の高い場所(筆者は過去の経験から海抜800メートルを目安にしている)のような条件でなければ、しっかり休めない。

暑いからといって、アイドリングしながらエアコンをかけっぱなしで寝るのは、環境面はもちろん、騒音の点からもNG。多くの都道府県条例でも、駐車時や停車時のアイドリングは禁止されている。逆に寒い時期の車中泊は、工夫でどうにかなる。前述の通り、密閉された車内に人間がいれば熱を持つものだし、少々厚着をしたり秋冬用のシュラフや羽布団を持ち込んだりすれば、存外快適に過ごせる。

大前提として、長時間クルマで過ごしたくない人は、車中泊には向いていない。また、快適なベッドでゆったり眠りたい、空調が効いた場所で眠りたいという人も、避けたほうがいいだろう。

筆者は運転が好きで長距離移動も多い。取材先が遠方の場合は道中のサービスエリアで仮眠を取るし、取材先が複数ある場合は、近隣の車中泊スポットを利用して移動の自由度を確保している。

コンパクトカーでも車中泊はできる

かつて車中泊といえばミニバン(昔はワンボックスと呼ばれていたけど)で、シートをフルフラットにするのが一般的だった。しかし、安全性や乗り心地を優先する中でフルフラットシート車は減り、ラゲッジルームが充実したクルマが増えている。このスペースを使えば、かつてのワンボックスと同じようなフラットなスペースを確保できる車種が多い。何も、ミニバンや大型のSUVでなくても構わない。

コンパクトワゴン「ルーミー」は自転車を載せられるスペースをアピール(写真:トヨタ自動車)

車中泊ができるかどうかは、リヤシートを格納したときに“足を伸ばして横になれる長さ”を確保できるかどうかが、判断のひとつの基準になる。コンパクトカーであっても、斜めに寝転がれば大人ひとりが寝られるクルマは多い。

軽自動車でも諦めないで、フロントシートを一番前までスライドさせて背もたれを倒してみよう。ヘッドレストを外して倒せば、リヤシートとひと続きになる場合がある。かつて筆者が所有していた軽ワンボックスもこのタイプで、大人2人で足を伸ばして寝ることができた。

ちなみに筆者が今、車中泊に使っているのは4ナンバーの商用バンだ。

重森さんが今、車中泊に愛用している商用バン(写真:重森大)
車内は車中泊をするためのアレンジが施されている(写真:重森大)

フラットなカーゴスペースにキャンピングコット(キャンプ用の折りたたみ式ベッド)を広げてゆったり休んでいる。走行中の乗り心地は乗用車に敵わないが、車中泊スペースの観点なら商用バンは安価で最高だ。

車中泊グッズはキャンプや防災にも役立つものを

次は、車中泊で便利なグッズを見ていこう。ここでは大きく「プライバシー」「寝床」「電源」「照明」の4つに分けて紹介するが、いずれにも共通する2つのポイントがある。「車中泊の頻度が高いかどうか」「車中泊以外に流用できるかどうか」だ。

車中泊の頻度が高ければ、車種別サイズで作られたカーテンや車中泊専用マット、走行充電機能付きのサブバッテリーシステムなどがあると便利だが、頻度が低ければ投資に見合わない。

たまにしか車中泊をしないのならば、キャンプ用品や防災用品の流用を考えよう。特にキャンプ用品は比較的安価な上、コンパクトに折りたたんで収納できるものが多く、便利だ。

プライバシー確保については、あまり気にならない人もいるかもしれない。しかし、少しでも窓をふさいでおくと、思ったよりも落ち着くものだ。といっても、完全に覆ってしまう車種別の製品は、コスト効率がよくない。まずは、カー用品店で売っている汎用のサンシェードで、できるだけ窓を覆ってみよう。

カー用品で購入した汎用サンシェードを利用した例(写真:木谷宗義)
すき間はあるがこれだけでもかなりプライバシー性は高まる(写真:木谷宗義)

もう少し高頻度で車中泊をする人は、キャンプ用のクッションシートを窓の形に合わせてカットして使うといい。カットに手間はかかるが、手軽に着脱可能な目隠しを安価に用意できる。色の濃いプラバシーガラスを装備しているクルマであっても、周囲が暗い中で照明を使うと思ったよりも外から見えてしまうので、注意したいところ。

寝床は、寝床自体を作るためのものと、寝具に分けられる。「寝床を作る」というのは、平らなスペースをできるだけ大きく確保すること。ラゲージスペースを使って車中泊する場合、フロントシートとリヤシートの間に大きな空間ができる。この空間を埋めれば、フロントシートの背もたれから後ろのすべてのスペースを寝床にできる。

空気で膨らむ専用のクッションもあるが、よほど高頻度でなければ専用品を用意する必要はない。筆者は、段ボール箱とクッションを使う。ミネラルウォーターなどの段ボール箱をリヤシート足下に置き、その上にクッションを積み重ねて高さを調整する。休憩中に使わない荷物も、高さ調整に使うと無駄がなくていい。

ダンボールとクッション、バッグを使ってすき間を埋めた例(写真:木谷宗義)

寝具は、寒さに合わせて選ぼう。これまでの経験から言うと、春夏秋3シーズン対応のシュラフ(寝袋)があれば、ほとんどのシチュエーションに対応できる。ホームセンターなどで2,000円も出せば手に入るだろう。筆者は真冬の車中泊も想定して少し厚めのシュラフを愛用しているが、それでも4,000円程度だ。

電源も、車中泊に欠かせないアイテムのひとつ。照明やスマートフォンの充電だけではなく、テレビや扇風機といった快適装備を動かすためにも用意しておきたい。何度も言うが、車中泊中のアイドリングは絶対にダメ。エンジンをかけてオーディオやテレビを使うのはマナー違反である以前に、多くの都道府県条例でも禁止されているから、電源の確保は大切だ。

では、どんな電源がいいのか? キャンピングカーに搭載されるようなサブバッテリーシステムは、乗用車には向いていない。1泊程度なら大容量の「モバイルバッテリー」が安価で使い回しも利く。2020年12月現在の相場でいえば、1万円も出せば20,000mAh程度のバッテリーを購入できる。この容量あれば、災害で停電があっても一晩くらいはスマートフォンと照明を使えるので、防災用品にもなる。筆者のオススメは、ここ数年で一気に選択肢が広がった「ポータブル電源」だ。

重森さんが愛用するポータブル電源は5万円ほどで購入したもの(写真: 木谷宗義)

1万円程度のものから10万円を超えるものまで豊富な製品が市場に出ており、多くはAC100V出力(家庭用コンセント)を備えている。比較的コンパクトなので、乗用車での車中泊でも邪魔にならないし、普段は充電して自宅に置いておけば、災害時に活躍する。

加えて、あると便利な小物も紹介しておきたい。筆者が車中泊で欠かさず持っていくのが、「S字フック」と「養生テープ」だ。S字フックは、アシストグリップにランタンを吊したり、ヘッドレストに引っかけてゴミ袋を吊したりするのに便利だ。養生テープは垂れてきたサンシェードを押さえたり、カーテンのほつれを仮留めしたりと、使い道が無数にあるので、ひと巻き持っておきたい。

重森さんが普段、使用している車中泊アイテム(写真:木谷宗義)

車中泊していい場所、ダメな場所

車中泊をする場所は、慎重に選んでほしい。というのも、車中泊人気の高まりとともにマナーの悪いユーザーが増えているのか、車中泊禁止を明示する施設や駐車場が増えているからだ。

先に挙げたようにサービスエリアやパーキングエリアは、あくまで“休憩場所”であり“宿泊施設”ではない。道の駅も同様だ。いずれの場所も休憩にとどめ、滞在時間はできる限り短くするよう留意したい。では、どのような場所なら安心して車中泊を楽しめるのだろうか? もっともわかりやすいのは、オートキャンプ場だ。

オートキャンプ場はテントを設営するスペースもあり広々使える(写真:PIXTA)

宿泊のための施設なので気兼ねなく車中泊できるが、アクセスしやすい場所が少ないという欠点もある。

そこでオススメしたいのが、「RVパーク」と「Carstay」だ。幹線道路からアクセスしやすい場所に多く、車中泊に特化したスペースを提供しているサービスである。オートキャンプ場より安価で、日本各地にあるのもうれしいところだ。筆者は実際に、情報の多さと利用のしやすさからCarstayをよく利用している。

重森さんが過去に利用したCarstay(写真:重森大)

CarstayのWebサイトやスマートフォンアプリで目的地を検索すると、車中泊スポットと観光地の情報を一度に検索できる。チェックイン/チェックアウトがスマートフォンだけでできる手軽さも魅力。最近はアプリもリリースされ、さらに使い勝手がよくなった。また、RVパークの一部もCarstayを通して予約可能なので、RVパークだけを検索するよりも使い勝手がいいのだ。

なお、どんなに便利な場所にあっても、コインパーキングや公園の駐車場での車中泊はできる限り避けたい。長時間駐車している車両は不審者扱いされる場合があり、職務質問を受けることもあるからだ。

達人の車中泊を実際に見てみよう

百聞は一見にしかず。筆者がどのように車中泊しているのか、実際の様子をお見せしよう。SUVやミニバンの方が車中泊はしやすいが、あえてトヨタ「カローラ ツーリング」をモデルにしてみた。

行き先は、神奈川県横須賀市にある「RVパーク京急観音崎」を選んだ。先に紹介したCarstayを通じて予約したスポットだ。今回は旅の途中の車中泊ではないので、東京から近く、海を望む立地のよさでここを選んだ。温浴施設もあり、車内にPCを広げる場を設けられれば、最近話題となっているワーケーションの場としてもオススメできる。

カローラツーリングは全長4,495mm×全幅1,745mm×全高1,460 mmとワゴンとしてはコンパクト(写真:木谷宗義)
「RVパーク京急観音崎」は温浴施設「スパッソ」に併設され入浴もできる(写真:木谷宗義)

現地に到着したら、まずはチェックイン。Carstayでのチェックインは、ナンバープレートと専用カラーコーンが一緒に写り込むように写真を撮り、登録するだけでOK。食事は、市街地までクルマを走らせてレストランでとった。こうして、現地でのちょっとした移動も気兼ねなくできるのは、車中泊旅のいいところ。

日が暮れる前に、車内を車中泊仕様にしていく。今回は、ミネラルウォーターの空き箱とクッション、それにキャンプ用クッションマットを使った。カローラツーリングはシートがフラットにならないので、ラゲージスペースに寝床を作ってみた。

最初に、運転席と助手席をできる限り前に出し、背もたれを起こす。次にリヤシートを倒し、ラゲージスペースを最大化する。最後に、リヤシート足下の空間を段ボール箱とクッションを使って埋めたら完成。これだけで、十分に足を伸ばして休めるスペースができた。そこにシュラフを広げれば、寝る準備は万端。なお、空き箱に強度を持たせるため、養生テープで補強してある。

キャンプ用クッションマットを敷いて作った車中泊スペース(写真:木谷宗義)
身長175cmの重森さんが十分に寝られるスペースができている(写真:木谷宗義)

各ウィンドウにはサンシェードを貼り付け、S字フックを使ってアシストグリップにランタンを吊した。シュラフの傍らには、コンパクトなキャンプ用サイドテーブルも用意。これはホームセンターで見かけて1,000円ほどで購入したもので、ドリンクを置いたりタブレットを置いたりと、平らな場所がほしいときにあると便利。

ここまででわかる通り、車中泊を便利にするグッズは、ホームセンターやカー用品店で比較的安価に手に入るものばかり。車中泊を経験しながら、優先度が高いものから少しずつ揃えていけば、自分に必要なものとそうでないものもわかってくるはずだ。

マナーを守って車中泊、Let’s Try!

最後にどうしてもお願いしておきたいことがある。それは、必ずマナーを守ってほしいということ。マナーを守らなければ、車中泊できる場所はどんどん減らされていく。

RVパークのように車中泊が許されている場所で寝泊まりしよう(写真:木谷宗義)

朝早い時間に道の駅に立ち寄ると、ごみ箱に収まりきれないほどのごみが捨てられているのを目にするが、こんなのは言語道断だ。有料でごみを受け入れてくれる車中泊スポット以外では、基本的にごみは持ち帰るよう心がけたい。空いている駐車スペースにイスやテーブルを出して食事をするのも、エンジンをかけっぱなしにするのもNGだ。

そう書くと口うるさく感じるかもしれないが、基本的な姿勢は簡単だ。施設を管理している人や、周囲に駐車している人が不愉快な思いをしないように気をつけること。そうすれば、自然とマナーは守れるはず。「車中泊する人がいると迷惑」と思われないように気をつけつつ、車中泊旅を楽しんでもらいたい。

自分のクルマで試してみよう!

重森さんのお話を聞いていると、アイテム以上に場所やマナーが大切なようですね。手軽にできるからこそ、問われる部分だと言えそうです。車中泊に必要なアイテムは、ホームセンターで手に入るようですし、まずは重森さんが教えてくれたアイテムを手に入れて、近くのRVパークで車中泊にチャレンジしてみては?

文:重森大 編集:木谷宗義(type-e)+ノオト
取材協力:Carstay

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