トヨタ車&レクサス車解説
アルファード「モデルチェンジ」の歴史 ~初代(2002年)と最新(2023年)を比較~
2002年5月、トヨタから新しいミニバンが発売されました。「アルファード」です。
それまで販売されていた「グランドハイエース」「ツーリングハイエース」「グランビア」「レジアス」といったハイエース上位モデルの後継車的位置づけですが、それらとは大きな違いが3つありました。
ひとつは「国内専用車となった」こと、ふたつめは商用モデルの設定がない「乗用車専用設計である」こと、そして室内空間を広くするために「前輪駆動化された」こと。
つまり初代アルファードは、国内ユーザーのために快適性最優先で開発した車という意味で、それまでの大型ワンボックス車とは成り立ちや狙いが大きく異なっていたのです。
それを知っておけば、アルファードの方向性をより理解することができるでしょう。余談ですが、初代アルファードは国産車としてはじめてパワーバックドア(電動テールゲート)を設定したモデルでもありました。
一方、最新のアルファードは、初代の登場から21年後の2023年6月に登場した4世代目となります。
今回は、そんなアルファードの初代モデルと現行モデルを比べて、20年以上の進化と変化を感じてみましょう。
※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください
初代アルファードの兄弟はヴェルファイアじゃなかった!

まず注目したいのは、兄弟車の存在です。初代アルファードには、「アルファードG」と「アルファードV」がありました。しかし、違いは主にフロントグリルのデザインと販売店だけであり、実質的に同じ車種。異なる販売店向けに用意された、双子のような関係です。
現行モデルのアルファードには、みなさんもご存じのように「ヴェルファイア」という兄弟が存在します。
ヴェルファイアは、アルファードとはフロントまわりのデザインなど、見た目が異なるだけでなく、グレード構成やサスペンションの味付け、車体剛性(車体構造の一部)、そしてパワートレイン(ヴェルファイアのガソリン車はターボエンジンを搭載)なども差別化。作り分けは、広範囲に及んでいます。
「快適性を追求したアルファード」に対し、「運転する歓びを拡大したヴェルファイア」というキャラクター作りが行われた結果、兄弟車の関係は、初代の「一卵性双生児といえる双子」から「性格が違う兄弟」へと変化しました。
ボディサイズは約20cm長く、約5cm広く
車体サイズを見てみましょう。

初代アルファードの全長は4,800mmで全幅は1,805mm(※1)。そして全高は1,935mmです。対して現行モデルは、全長4,995mm×全幅1,850mm×全高1,935mm(※2)。すなわち高さは変わりませんが、全長が+195mmとふたまわり、全幅は+45mmとひとまわり大きくなりました。
※1 エアログレードの全長は4,845mm、全幅は1,830mm
※2 プラグインハイブリッド車は全高1,945mm
20年前と今では、車体の大きさに対する感覚が異なります。初代アルファードも十分、大きなサイズでしたが、「トヨタのフラッグシップミニバン」としても求められるサイズ感が、20年で全長およそ20cmの拡大につながったというわけですね。
全長に対して全幅の拡大が5cm弱に抑えられているのは、機械式立体駐車場ユーザーへの配慮もあります。

マンションなどに設置される機械式立体駐車場の多くは、入庫できる最大幅が1,850mmまでで、アルファードはその枠を守っているというわけです。
ところで、車体が大きくなった現行モデルですが、実際に運転してみると多くの人は「初代よりも狭い場所でも運転しやすい」と感じるのではないでしょうか。
その大きな理由が360°カメラ(パノラミックビューモニター)の存在です。
現行モデルにはリヤだけでなくフロント、そして側面と車両周囲の360°をカメラでとらえてダッシュボードの画面に映す機能が、標準で組み込まれています。

駐車時にはこの装備の存在が絶大で、これまで目視できず勘に頼っていた部分もしっかり確認できるように。感覚的には車がふたまわり以上小さく感じられ、画面を通して目視できる安心感もあります。だから運転しやすく感じるわけ。
このパノラミックビューモニターは、映像処理によってまるで車体が透けているかのように、床下の地面の様子まで確認できる機能(床下透過表示機能)も搭載(※)。便利さをより実感できるとともに、技術の進化に驚きますね。
※2026年6月の一部改良で廃止となった「X」グレードでは床下透過表示機能は非搭載
ハイブリッドは特別なエコカーだった
パワートレインも変化しました。初代がデビューしたときにまだハイブリッドはなく、ガソリン車のみ。ただし、2.4Lの直列4気筒と、3.0LのV型6気筒(ともに自然吸気)から選ぶことができました。
現行モデルに搭載されるエンジンはすべて4気筒で、排気量は2.5L。アルファードは自然吸気とする一方で、ヴェルファイアはターボ付の高出力タイプとして差別化しています。ヴェルファイアのターボエンジンは、初代のV6エンジンに代わる存在といえるかもしれません。

そして実は、デビュー当初はガソリンエンジンのみだった初代モデルにも、ハイブリッドが存在します。デビューから約1年後の2003年7月に「アルファードハイブリッド」が追加されているのです。

「ガソリン車とハイブリッド車が存在する」という意味では、初代も現行モデルも同じですが、現行モデルのアルファードはハイブリッド車を中心としたグレード展開となっています。外部電力から充電可能なプラグインハイブリッド(PHEV)が登場したことも、初代との大きな違いです。
初代のアルファードハイブリッドは、そのデザインからも「エコカー」という特別な位置づけで登場しましたが、20年の時を経て「ハイブリッドが当たり前」になったことがわかりますね。
もちろん、燃費は相当よくなっていて、初代モデルが、4気筒エンジンで9.7km/L、6気筒エンジンで8.9km/Lだったところ(10・15モード)、現行モデルのガソリン車は10.6km/L、ハイブリッドでは18.9km/Lまで伸びています(数値はすべてFF車のWLTCモード)。
初代のガソリン車と現在のハイブリッド車では、およそ2倍も使うガソリンの量が違うというわけ。しかも、現在は初代のころの測定方法「10・15モード」よりも、より厳しい「WLTCモード」での計測値です。
※10・15モード:1991年に定められた日本の燃費測定方法。従来の「10モード」に15項目の走行パターンを加え、当時の使用環境により近い条件で燃費を測るために導入された。その後、走行環境の変化で測定値と実燃費の差が広がり、「JC08モード」へ移行した。
※JC08モード:2011年に導入された日本独自の燃費試験方法。従来の「10・15モード」より実走行に近い条件を目指し、エンジンが冷えた状態からの走行や細かな速度変化も加えて測定するため、より現実的な燃費値が示されるようになった。
※WLTCモード:2018年10月から日本で表示が義務化された国際基準の燃費測定方法(正式名称:世界統一試験サイクル/Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)。従来のJC08モードに代わり導入された。「市街地」「郊外」「高速道路」の3パターンを実際の使用状況に近い割合で組み合わせ、より現実的な燃費を示せる点が特徴。
主力は「8人乗り」から「7人乗り」へ
次は、車内の違いを見ていきましょう。
特別な仕立ての仕様を除き、3列シートを備えた多人数乗車モデルであることは、初代も現行モデルも変わりません。7人乗りと8人乗りが用意されるのも同じです。
しかし、初代では「2-3-3」レイアウト(1列目が2人、2列目が3人、3列目が3人)の8人乗りがメインだったのに対し、現行モデルでは「2-2-3」の7人乗りが中心。

これは「人がたくさん乗れたほうがいい」という初代のころから、「空間をゆったり使う」という方向へと、ユーザーの考え方が変わってきたのを受けての変化といえるでしょう。エグゼクティブラウンジの存在と人気が、それを象徴しています。
なお、現在のプラグインハイブリッドモデルは、3列目も2人掛けとした「2-2-2」レイアウトの6人乗りです。

ちなみにシートは、初代だと上級グレードのみ運転席パワーシートが備わる程度。しかし現行モデルは、ベーシックグレードを除き助手席もパワーシートとなりました。
そのうえ、7人乗りだと2列目シートのリクライニングやオットマンの動きまで電動化。シートヒーターやベンチレーション(暑い日のムレを抑えるための通風機能)まで組み込まれるなど、快適な仕立てになっているのもポイントです。
ゆったりと座れるのはもちろん、「乗員をどれだけ快適に移動させられるか」という部分に大きな進化を見ることができるというわけ。
ところで、「空間をゆったり使う」という考え方は、ダッシュボードの形状にもいえます。
初代アルファードのダッシュボードは、開放感やウォークスルー性(歩いて車内移動しやすい環境)を求めて、センターコンソール(運転席と助手席の間にある箱)は小さく設計されていました。
しかし、現行モデルは全車ともウォークスルー性は考えず、ダッシュボードから繋がった大型センターコンソールを装備。シフトレバーもインパネからセンターコンソールへ移動しています。

これは「ミニバンらしさ」よりも、「セダンのように包まれ感や独立性のある運転席環境」を求めたもので、ミニバンの運転感覚に「セダンのような雰囲気」を求める人が増えたことを反映しているといえるでしょう。
初代から「なくなった」装備もある
装備面をみると、初代では標準装備が上位グレードだけに限られ、しかも助手席側のみで運転席側は設定すらなかったパワースライドドアは、現行モデルでは運転席側も助手席側も標準装備に。
最上級グレードだけに標準装備だったパワーバックドアは、ベーシックグレードを除き標準装備となりました。電動系機能の充実度は、初代と現行モデルでは比較にならないほどです。
それから初代では全車ともキーレスエントリー(リモコンキー)で、スマートキーはオプションでも設定がありませんでした。対して現行モデルでは、当然ながら全車ともスマートキーに。また、オプションだったカーナビの類も、現行モデルでは全車に組み込まれるようになっています。

その一方で、初代にはあったのに現行モデルではなくなっている装備も。具体的にはサイドウインドウやリヤウインドウを覆うカーテンや2列目の回転シートです。
シートに関しては法規的な安全基準との兼ね合いもありますが、どちらかといえばそういった機能を求めるユーザーの減少という側面が強いでしょう。
安全装備や運転サポート機能の充実は現行車ならでは
20年でもっとも大きく進化したのは、先進安全装備や運転サポート機能かもしれません。
いまでは全車標準装備の衝突被害軽減ブレーキは、初代には設定すらないし、現行モデルでは車両や自転車が接近しているときは、安全のためにスライドドアが開かないといった機能(安心降車アシスト(ドアオープン制御付))まであります。
レーダークルーズコントロール(ACC:アダプティブ・レーダークルーズ・コントロール)は、初代でも最上級グレードの「MZ」にオプションで用意されていましたが、低速域では作動しないもの。
現行モデルでは、レーダークルーズコントロールが全車速対応となり、全グレードに標準装備。さらに、高速道路・自動車専用道路での渋滞時(約40km/h以下)には、レーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストの作動中に、認知・判断・操作を支援する「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」(※)も設定されるなど、運転の疲れを軽減する先進機能の充実度は飛躍的に高まっています。
※Executive Loungeに標準装備、Zにメーカーオプション
また車から降りて、スマホで駐車&出庫の運転操作ができる機能(アドバンスト パーク(リモート機能付))も、現行アルファードから採用(※)されました。日本でiPhoneが発売されたのが2008年ですから、スマホ機能がなかったのは当然といえば当然ですね。
※Executive Loungeに標準装備。Z(ハイブ リッド車、プラグインハイブリッド車)にメー カーオプション
初代のエントリー価格は265万円だった?
最後に価格も比較してみましょう。
初代の価格帯は265万円~399万円。ただし、当時は「消費税抜き」の表記なので、現行モデルと比較しやすいよう当時の税抜価格を消費税10%換算すると、291万5,000円~438万9,000円となります。
対して現行モデルの税込み価格(※)は、559万9,000円~1,069万9,700円と大きく上昇。プラグインハイブリッドが登場したことなど、パワートレインの変化もありますが、安全装備の充実やエグゼクティブラウンジに代表される装備の高級化や上級化も大きな要因でしょう。
※2026年6月の一部改良後モデルの価格
20年という時間の流れの中で、より高級なモデルへと進化し、エントリー価格は大きく上昇しましたが、リセールバリューの上昇にくわえ、残価設定ローンやKINTOでのサブスクなども一般的になり、自分にあった所有方法を選べるようになったのは、当時と違うところです。
アルファードが高級車の代名詞となるまで

初代アルファードがデビューした2000年代初頭は、まだファミリーカーといえばセダンが一般的で、3列シートのミニバンは「多くの人を乗せるための車」という位置づけでした。
その中で「より広い室内で、より高級に」というのが、初代アルファードの立ち位置だったといえるでしょう。
しかし、その後ミニバンは一般的な存在となり、気が付けば「室内が広く快適で装備が充実したセダンに代わるポジション」へ。多人数乗車をしない人でも、選ぶような車となっていきました。
いまアルファード/ヴェルファイアは、かつての「クラウン」のように「誰もが知り、多くの人が憧れる高級車の代名詞的な存在」となっています。
販売面では、国内専用車からアジアなど多くの国へ輸出されるように。それは、アルファードの価値観と魅力が、日本のみならず海外でも受け入れられているからに他ならないでしょう。
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