トヨタ車&レクサス車解説

「ランドクルーザー200」中東ドバイのデザートサファリで体験した砂漠という極地での信頼性/工藤貴宏【リレー連載:記憶に残るトヨタ】

「ランドクルーザー200」中東ドバイのデザートサファリで体験した砂漠という極地での信頼性/工藤貴宏【リレー連載:記憶に残るトヨタ】

「極地(きょくち)」という言葉をご存じでしょうか。本来の意味は“北極や南極周辺の過酷で居住できない地域”ですが、比喩的な表現として「極限の場所」とか「最果ての地」といった意味合いでも使われます。

人間が生活を営むのに適した場所を離れて極地(極限の場所)に近づけば近づくほど道は険しくなり、そこを走る車種は絞られていきます。

理由はもちろん、対応できる悪路走破性を備えていないと走ることができないから。「生き残れない」と言ってもいいかもしれません。道がクルマを選ぶのです。

そして多くの極地で、最後まで見かける車種があります。それはトヨタ「ランドクルーザー」。

モータージャーナリストをはじめ、クルマにかかわる人たちなら、誰しも記憶に残るトヨタ車があるもの。当シリーズは、それぞれの思い出に残る1台のトヨタ車に焦点を当て、振り返っていくリレー連載。

工藤 貴宏(くどう たかひろ)

この記事の執筆者

工藤 貴宏(くどう たかひろ)

モータージャーナリスト。クルマが好きすぎて大学時代に自動車雑誌の編集部でアルバイトをはじめ、大学卒業後はそのまま就職。その後独立してフリーランスのモータージャーナリストとなり、雑誌やWebで自動車の記事を執筆。海外でのドライブも大好きで、アメリカでは1週間で3,000km走ったことも。

※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください

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極地に耐えうる3車種のうちのひとつ

クルマの知識に明るい人なら「ほかの車種は走っていなくても、ランドクルーザーだけは見かける」という場所が世界にはいくつもあることをご存じでしょう。

そのひとつとなるのが砂漠。2024年の秋に、中東のドバイで「デザートサファリ」と呼ばれるツアーに参加しました。

言うなれば「砂漠ツアー」。SUVに乗って砂漠をドライブし、風景や食事も含めたアラビアン体験を楽しむ観光ツアーです。

ランドクルーザー200と広大な砂漠
広大な砂漠を行くスケールの大きなツアー!

そんなデザートサファリで使うクルマは、「どんなクルマでもOK」とはいきません。まずは、砂漠を走れる走行性能が必要です。しかも、単に走れるだけではなく、安全に戻ってくるためには、機械としての品質の高さも含め、安心して走れなければなりません。信頼が大事なのです。

ドバイの砂漠で見かけるクルマは、本当に限られていました。砂漠を走るクルマのほぼ100%が、わずか3車種で占められていたのです。

まずは日産「パトロール」。今は海外専用車(2027年より日本でも販売予定)ですが、かつて日本で「サファリ」として売っていたクルマの後継モデルです。

日産パトロールと砂漠
今回のツアー車両にもパトロールの姿があった

それからトヨタ「セコイア」。日本で知る人は少ないでしょう。アメリカ専用モデルで、ランドクルーザーのワゴン系モデル(200や300)よりもひとまわり大きなボディを持ちつつ、ランドクルーザーに匹敵する悪路走破性を備える「ワゴン系ランドクルーザーのお兄さん」といった存在です。

左側がランドクルーザー200、右側に見えるクルマがセコイア
右側に見えるクルマがセコイア

なぜアメリカ専用車が遠く離れた中東のドバイを走っているかというと、新車としてアメリカで販売された車両が、後に中古車として中東へ輸出されているから。

余談ですが、中東ではアメリカからの中古輸入車を見かけることが少なくありません。アメリカ式の赤いウインカーがそのままなので、すぐにわかるのです。

そして、3車種目が「ランクル」の愛称で親しまれているランドクルーザー。私が訪れたのは2024年の秋でしたが、多くが先代型となる「ランドクルーザー200」で、中には新型である「ランドクルーザー300」も混ざっているという状況でした。

“新人”だった当時の感動は忘れない

私を担当してくれたツアードライバーのパートナーは、それなりに酷使されてきたことを感じさせる200。ガイドにとっては、長年一緒にタッグを組んできた相棒のような感覚なのでしょう。

「VX-R V8」のエンブレムを装着するランドクルーザー200
「VX-R V8」のエンブレムを装着するランドクルーザー200

ランドクルーザー200は、2007年9月のフルモデルチェンジで「ランドクルーザー100」からバトンを受け継いだモデル。

自動車ライターとして“若手”どころか“新人”だった私もメディア向け試乗会に参加して、「こんなところを走れるのか?」というオフロードコースを、特別なテクニックなしに走破したことに感動したのをよく覚えています。

あれから19年。そんなに経ったのか。私も年をとるわけだ。

閑話休題。そんなランドクルーザー200は当時のランドクルーザーとして最も大きな「全長ほぼ5m×全幅ほぼ2m」の車体に排気量4.7LのV8自然吸気エンジンを搭載。2年後の2009年には同じくV8自然吸気ながら排気量4.6Lの新世代エンジンへと換装されています(海外向けはV6自然吸気ガソリンエンジンやディーゼルエンジン搭載車も設定)。

砂漠の傾斜を走るランドクルーザー200
この傾斜を見れば砂漠の過酷さがわかるはず

他のランドクルーザーシリーズに対する大きな特徴は、上質な内装と快適性を備えつつ、悪路走行をサポートするハイテクデバイスの充実で、激しい悪路でも特別なテクニックなしで走れること。

しかし、私を乗せて砂漠へ向かった200はベーシックタイプのグレードで、電子制御で悪路走行をアシストする機能の装着はわずか。つまり、ドライバーの腕が試される仕様でした。

砂漠ではトルクよりも馬力がものをいう

では、砂漠の走り方とは、どうなのか。実際に体験する前はまったくイメージができなかったのですが、結論から言うと「クルマに相当な負担がかかる」というもの。

砂漠はフラットではなく大きな高低差があり、上り坂では失速やスタックするのを防ぐためにどんどんアクセルを踏んで、スピードを乗せていかなければなりません。だから、高回転を多用することになります。

そういったエンジンの使い方が、山岳オフロードとの大きな違いだと砂漠に行って初めて気が付きました。山岳オフロードはトルクが重要ですが、砂漠はパワーが求められるため、エンジンに強い負担がかかるのです。

砂漠の斜面をアクセル全開で登っていくランドクルーザー200
こんな斜面をアクセル全開で登っていく!

ドライバーさんによると「ここでは水温が上がるクルマはダメだ」とのことでした。

ランドクルーザー200を駆るドライバーは、険しい上り坂ではシフトダウンを駆使しながらグイグイと進んでいきます。それを見ていた私は思いました。ランドクルーザー200は、“水を得た魚”のように生き生きしていると。クルマ自身が、走りを楽しんでいるかのように見えるのです。

砂漠をしっかりと安心して走れるクルマは、世の中にそう多くはないでしょう。前出のように、ドバイのデザートサファリに使われるクルマはパトロール、セコイア、そしてランドクルーザーのほとんど3車種。

もちろん、ほかにもそれらと同様に砂漠を走れるクロスカントリーカーは存在するかもしれません。しかし、信頼性や耐久性、そして整備性やコスト管理まで考えると、極地のひとつである砂漠を走るツアーで使われる車両はその3モデルに絞られるのでしょう。

身を持って体感した「ランドクルーザーの真髄」

砂漠体験を通じて、ランドクルーザー200は私に新しい世界を見せてくれました。見渡す限りの砂漠という美しい風景、限られた車種しか走ることができない場所を生き生きと走るクルマの姿、そして世界に誇れるランドクルーザーの高い走破性。

それらは一生忘れられない体験として、記憶に残ることでしょう。

ランドクルーザーは2021年のフルモデルチェンジで200から300へバトンタッチし、200はすでに生産を終了しています。しかし、砂漠体験で目に焼き付けた“陸の巡洋艦”の姿は、とても鮮烈なものでした。

ツアー車両にはランドクルーザー300もあった
ツアー車両にはランドクルーザー300もあった

ランドクルーザーの真髄である「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」の一端を体感できたのです。そんなランドクルーザー200は私にとって特別な1台であり続けるに違いありません。きっと永遠に――。

(文・写真:工藤貴宏 企画・編集:木谷宗義/type-e)

工藤 貴宏(くどう たかひろ)

この記事の執筆者

工藤 貴宏(くどう たかひろ)

モータージャーナリスト。クルマが好きすぎて大学時代に自動車雑誌の編集部でアルバイトをはじめ、大学卒業後はそのまま就職。その後独立してフリーランスのモータージャーナリストとなり、雑誌やWebで自動車の記事を執筆。海外でのドライブも大好きで、アメリカでは1週間で3,000km走ったことも。

木谷 宗義(きたに むねよし)/type-e

この記事の編集者

木谷 宗義(きたに むねよし)/type-e

SNSを含むさまざまなクルマ関連メディアで、クルマとカーライフにまつわるコンテンツの企画・制作を行う自動車編集者。そのほか自動車コラムニストや大学講師などの顔も持つ。

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