トヨタ車&レクサス車解説
モデリスタとは?歴史~エアロパーツのこだわりまでを徹底取材
(画像提供:TCD)
トヨタの販売店で購入でき、装着した状態での納車が可能なモデリスタのエアロパーツ。2025年1月に開催された「東京オートサロン(以下、TAS)2025」に出展した際、展示された「EMBRYO(以下、エンブリオ)」を、デザインの象徴と標榜しました。これからのモデリスタ、そしてモデリスタデザインはどう変わるのか? モデリスタブランドを展開する「トヨタカスタマイズ&ディベロップメント(以下、TCD)」の皆さんにお話を伺いました。
※記事公開時の情報に基づいており、最新でない情報が含まれる場合もあります。最新の情報については各公式サイトなどでご確認ください
トヨタやレクサスの販売店で購入でき、装着した状態での納車が可能なモデリスタのエアロパーツ。2025年1月に開催された「東京オートサロン(以下、TAS)2025」に出展した際、展示された「EMBRYO(以下、エンブリオ)」を、デザインの象徴と標榜しました。

これからのモデリスタ、そしてモデリスタデザインはどう変わるのか?
モデリスタブランドを展開する「トヨタカスタマイズ&ディベロップメント(以下、TCD)」の開発本部内外装技術部デザイン室スタイルクリエイトグループの古長力さん(以下、古長さん)と久世峻大さん(以下、久世さん)、営業企画本部用品企画部中期戦略グループの浜崎晋治さん(以下、浜崎さん)にお話を伺いました。
オーダーメイドによるカスタマイズカーの製作から始まったモデリスタ
モデリスタとは、エアロパーツをはじめトヨタ車/レクサス車の内外装品を扱うTCDのブランドです。設立した当初はオーナーの要望に応え、オーダーメイドでカスタマイズカーを製作する、イタリアのカロッツェリアのような会社でした。
1995年、道路運送車両法の改正によりカスタマイズに関する規制が緩和され、ユーザーの「自分だけの車が欲しい」という要望が高まりをみせます。この声に応えるため、1996年に「トヨタモデリスタインターナショナル(東京)」「モデリスタ福岡」「モデリスタ神戸」の設立を決定。それぞれのモデリスタは独立した会社として、1997年より運営を始めます。
「お客様の好みに合わせた車を造りあげる」をテーマとし、オーナーと相談しながらカスタマイズカーを製作する会社としてスタートしたモデリスタ。オーナーの納得のいくデザインを設定してから実作業に移行。
手作業でボディの加工やパーツの製造を行い、世界に一台だけのカスタマイズカーを造りあげます。トヨタ車そしてレクサス車であればベースとなる車のブランドは問わず、完成度の高さが話題となり、多くの著名人の愛車カスタムを手がけました。
コンプリートカーカスタマイズパーツの販売開始
オーダーメイドによるカスタマイズカーの製作と平行して、後の主力になるモデル別エアロパーツの開発に着手。1997年にはモデリスタ初となるコンプリートカー「PX-01」を発表、翌1998年には「PX-12“Napoli”」を発表します。
当初、コンプリートカーシリーズはカスタマイズパーツの販売はしておらず、ベースとなる車両に架装した状態で販売。各モデリスタのほか、トヨタの販売店でも購入できたそうです。


1998年、TASにて「ZAGATOイタリアンロケット」、「エスティマ・アメリカンビレット」、「ルシーダ・アメリカンビレット」、「タウンエース・アメリカンビレット」、「エスティマ・RVexバージョン」、「エミーナ・RVexバージョン」の、6台のコンプリートカーを展示します。

ZAGATOイタリアンロケットは、まだ発売前の初代ハリアーをベースに、イタリアの名門カロッツェリア「ザガート(SZデザイン)」と共同でデザインを行ったデザインスタディモデル。同年6月にハリアーの特別モデル「ハリアーザガート」として市販されました。

ZAGATOモデルのコンプリートカーは、2001年に「VM180“ZAGATO”」、2006年に「ハリアーザガート」の、計3モデルがリリースされています。


エアロパーツをはじめとした、カスタマイズパーツの販売を2000年から開始。そして2001年、トヨタ「ノア(初代)」の発売開始とあわせて、車両のカタログに挟み込まれるディーラーオプションカタログにモデリスタのノア用カスタマイズパーツが掲載され、ディーラーオプションでカスタマイズパーツの取り付けができるようになりました。
カスタマイズパーツは「モデリスタバージョン」や「ヴァルドバージョン」「エボリューション」「ダムドバージョン」と、4つのキットが用意され、また、各カスタマイズパーツも個別に購入することもできました。
今となっては当たり前となっているモデリスタの特徴のひとつ「新車の納車時にはカスタマイズが完成している」は、ブランド設立から4年を経て確立されました。

3つのモデリスタが統合しTCDのブランドへ
2002年にモデリスタ神戸、モデリスタ福岡はモデリスタインターナショナルに統合。そして2018年、同じくトヨタ車のカスタマイズを手がけていた「トヨタテクノクラフト」「ジェータックス」と統合し、TCDを設立。モデリスタは現在の形であるTCDのブランドとなります。
モデリスタはオーナーの持ち込んだ車両のカスタマイズ、コンプリートカー販売、カスタマイズパーツ販売を主とした運営を行ってきました。しかし一定の役割を果たしたと、持ち込み車両のカスタマイズとコンプリートカー販売を終了。カスタマイズパーツの開発と販売を中心とするスタイルに変更し、現在に至ります。
デザインの中枢はレゾネーティングエモーション

モデリスタには何人くらい、専任スタッフや専任デザイナーがいらっしゃいますか?
「現体制ではモデリスタ専任というスタッフやデザイナーはいません。スタッフもデザイナーもTCDに籍を置いており、必要に応じてモデリスタの業務やデザインを行います」(浜崎さん)
「モデリスタがインターナショナル、神戸、福岡の各社で活動していた当時は、それぞれに15人ほどの社員がいました。デザイナーはインターナショナルにのみ在籍し、各店舗で個別のカスタマイズを行う際は、神戸、福岡に出張してデザインを行っていました」(古長さん)
必要に応じてモデリスタのデザインをされるということは、他のブランドでもデザインを?
「はい、古長や久世はモデリスタを中心に活動していますが、GR PARTSのデザインも手がけています」(浜崎さん)
それは意外でした。それではトヨタとモデリスタの関係は、どのようなものでしょう。
「会社としては、TCDはトヨタ自動車のグループ会社です。統合前のトヨタモデリスタインターナショナルも同様です。トヨタ自動車は大きな会社ですので、メーカーではやりきれない部分を担当することでお客様の細かなニーズに答えてゆくことが我々の役割ですよね」(浜崎さん)
「モデリスタの設立には、メーカーであるトヨタではできないカスタマイズカーやカスタマイズパーツを販売するためという一面もありますし、トヨタの拡販に協力しながら、一緒に歩む会社であり、お客様の“もっと”に応えるブランドだと思っています」(古長さん)
かつてモデリスタの営業所には、一緒に福祉車両を扱う「トヨタハートフルプラザ」がありました。こちらはどのような関係でしょう。
「ハートフルプラザでは、必要に応じて身体の不自由な方にあわせて車両のカスタマイズを行っています。障害を持つ方は一人ひとりその程度によって求めるカスタマイズが異なるため、モデリスタが行っていた個別カスタマイズのノウハウが有効でした。そこでパーツを手作業で造る技術と設備を持っていたモデリスタが協力していました」(浜崎さん)
1車種のカスタマイズパーツは、何人でデザインされていますか?
「基本的に1人です。ハリアーのように複数のバージョン(エアロキット)が設定されている車種は、複数人のデザイナーが担当バージョンを受け持つケースもあります」(古長さん)
では、古長さんと久世さんがデザインを手がけられた代表的な車種と、思い出深い車種を教えてください。
「代表的なのはクラウンとプリウス、ノア、ヴォクシー。思い出深いのはC-HRでしょうか。C-HRはニューモデルとして多くの新機軸を持ち、デザインも野心的。せっかくトヨタが新しいことに挑戦した車です、こちらも色々と新しい試みに挑戦してみました。大変でしたが、とてもやりがいがあり楽しかったですね」(古長さん)

「私はレクサスのLX、RX、IS、ランクル300。思い出深いのは先代のヴェルファイアです。ヴェルファイアはベース車の段階で存在感かつ高級感ある意匠が施されていたので、どうやって新たな魅力を引き出すか、本当に悩まされましたね。売れているモデルですから、プレッシャーも大きいものでした。悩みに悩みましたが、フォルムをそのままに見ごたえのあるデザインを実現できたと思っています」(久世さん)

モデリスタのカスタマイズに共通する、こだわりはありますか?
「もちろんです。カスタマイズパーツに限らずモデリスタの提供する価値の中枢には、感情に響くデザインがあります。私たちはこれを“Resonating Emotion(以下、レゾネーティングエモーション)”と呼んでいます。レゾネーティングエモーションは「感性」、「創造性」、「喜び」という3つのキーエレメンツから成り立ちます」(浜崎さん)
「具体的にはベースとなったトヨタ車の造形や背景を深く理解し、フォルムと響鳴しあうデザインを創造。カスタマイズされた車を目にするたびに喜びを感じ、所有欲が満たされる。そんなカスタマイズパーツを目指しています」(久世さん)
「理念や理屈はさておき、お客様にはベース車とカスタマイズパーツの一体感や、洗練された上質さを感じてもらいたいですね」(古長さん)
KINTOで扱うモデリスタの仕様は、どのようにして決めていますか?
「GRも含め、KINTOで扱う仕様はKINTOの皆さんと相談して内容を決めています。KINTOはサブスクという仕様上、最終的には車両を返却することが決められています。月々のお支払いが高額になりすぎないよう、人気があり、デザインに効果的なカスタマイズパーツを用いた仕様を提案しています。多くのお客様にご利用いただいており、とてもありがたく思っています」(浜崎さん)
カスタマイズパーツをデザインするうえで、やはりモデリスタならではの苦労や悩みもあるのでしょうか。
「モデリスタの強みのひとつに、やはり『トヨタのグループ会社である』という安心感があり、お客様から『モデリスタだから品質クオリティが高く、法規的にも安心できる』という声をいただいております。TCDはトヨタ自動車の方針は遵守しながら、独自の基準で製品を生み出しています。
実際デザインを描くときには、法規的な部分はもちろん、センサーやレーダーなどの安全装備や日頃の使い勝手など、様々な要件を満たしながらよりよいデザインを検討していますが、こんな所にセンサーがあるとデザインしにくいなと思うことは、正直ありますね(笑)」(古長さん・久世さん)
先ほど、「カスタマイズパーツに限らず」と伺いましたが、モデリスタはカスタマイズパーツ以外にも、手がけている製品があるのですか?
「はい。久世は『トヨタマリン』と共同でクルーザー『PONAM-31』のデザイナーを務め、古長は時計メーカー『SEIKO』とコラボレートした腕時計『SEIKO SELECTION MODELLISTA Special Edition』のデザイナーを務めました。両製品とも車とは異なる製品ですが、レゾネーティングエモーションをデザインの軸としています」(浜崎さん)


多彩になった価値観に応えるリブランディング
昨年(2024年)のTASで、モデリスタは「上質・洗練・機能」をキーワードに進化(深化)することを宣言されました。その理由を教えてください。
「1つは、トヨタの車のカスタマイズをお手伝いするブランドとして、GR PARTSやトヨタ純正用品といった商品との差別化や、幅広い方向性をご提供するために方向性を明確にしたことです。もう一つの理由は、他業種とのコラボレートだけではなく、モデリスタブランドとして自動車関連にとどまらず、お客様のライフスタイルを豊かに彩るブランドになりたいという想いからです」(浜崎さん)
自動車以外で、ですか?
「はい。車を所有される方、されない方にかかわらず、ライフスタイルを豊かにするためのお手伝いができるブランドを目指しています。1月のTASではご要望が多かったシャツやハンカチ、ナップザックといったグッズに加えて、モデリスタをイメージしたオリジナルアロマを販売しました」(浜崎さん)


モデリスタをイメージしたアロマとは、どのような香りでしょう?
「簡単に表現すると、ウッディーでスパイシーな香りです。上質な安らぎと都会的な刺激が得られるよう意識しました。これからのモデリスタは五感を刺激するデザインを創造し、多彩になったお客様の価値観に応えられるようになりたいと思っています」(浜崎さん)
今後、どのような製品を開発する予定ですか?
「アイデアレベルでは衣類や小物といった普段使いに生かせるものから、ファンの方に好まれるような嗜好品を考えています。本格的な始動は、まだまだこれからですね」(浜崎さん)
新たなカスタマイズパーツの方向性は「ジオメトリカルとオーガニックの融合」
TASにて自動車のモデリスタデザインも、新たにスタートすると宣言されていました。カスタマイズパーツはどう変わるのでしょう?
「モデリスタブランド自体のリブランディングとともにモデリスタデザインも一層の進化/新化を目指し、その象徴としてエンブリオを造りました」(古長さん)


TASで展示されていたオブジェですね。対象のようで非対象な造形で、とても不思議な印象を受けました。
「デザインコンセプトはジオメトリカル×オーガニック。これは幾何学的(ジオメトリカル)と有機的(オーガニック)の融合を目指したデザインモデルで、無二の個性を感じる左右非対称造形としました。
右側は躍動的で流麗な線とムダを削ぎ落した彫刻的な面の融合、左側は硬質な線と豊かなハリのある面を融合しています。心臓の鼓動のように脈動する間接照明とライン発光で生命の息吹を表現。エンブリオ本体から台座へ投写された動きのある映像が、神秘さを生み出しています」(古長さん)

今後のモデリスタデザインは、エンブリオのイメージで行うということですか?
「デザイナーには実際にエンブリオを見てもらい、感じたことをデザインで表現してもらう、いわばインスピレーションを与えてくれる存在ですので、今後すべてがエンブリオのような形になるということはありません。
これからもモデリスタデザインの中枢がレゾネーティングエモーションであることは変わりませんし、ベースとなる車の魅力を引き出すという根幹がありますが、モデリスタらしさを感じることができるどこか一貫性のあるデザインにはしていきたいですね」(古長さん)
TASにて、エンブリオと同時に展示された「CONCEPT ZERO(以下、コンセプト・ゼロ)」は、新しいモデリスタデザインで製作された、最初のコンプリートカーと伺っています。


「その通りです。トヨタ『bZ4X』をベースにし、エンブリオに注がれた意図を私なりにくみ取って解釈し、近未来感をイメージしてデザインしました。ベースにbZ4Xを選んだのは、EVで先進的なイメージを持ったモデルだからです。先進的な上質さと洗練を表現したかったので、全体をホワイトで統一しました」(久世さん)
すごい存在感です。TASではじめて目にしたとき、衝撃を受けました。
「サイドボディのデザインは特に強く、ジオメトリカルとオーガニックの融合を表現しています。イルミネーションやプロジェクションといった光の使い方もエンブリオを源流にし、デザインに織り込みました」(久世さん)


コンセプト・ゼロは市販の予定は?
「ありません。新しいモデリスタデザインによるカスタマイズの一例として製作しており、当初より市販化は考えていません」(久世さん)
それは残念です。
「エンブリオもコンセプト・ゼロも、これから開発するカスタマイズパーツには絶対、生かされます。自動車用のカスタマイズパーツ、ライフスタイルを豊かにする製品ともに、今後のモデリスタデザインに期待してください」(浜崎さん)
※所属部署名は取材時のもの。
(取材・文:糸井賢一 編集:田村恵美/PASSERBY GRAFFICS+type-e)
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