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空港アナリストが推薦!飛行機に乗らなくても遊びに行きたい魅惑の地方空港
海外に行かなくたって、それどころか、飛行機に乗らなくたって空港って楽しい!近年、空港はただの「飛行機乗り場」ではなく、エンタメ施設として進化が著しいのです。空港アナリストとして日本各地の空港を訪れる齊藤成人さんに、「お出かけスポット」として楽しめる地方の空港をピックアップしていただきました。安心して出かけられるようになったら、ぜひドライブに出かけて、アミューズメントと「旅の匂い」を楽しんでみてください。
日本には空港が97ヶ所(国土交通省航空局「空港一覧」による)もありますが、みなさんは実際にどれだけの空港に行ったことがありますか。筆者の経験上、「旅行好き」という方にこの質問をしてみても、行ったことがある国内空港を数えてもらうと多くても20程度です。それだけ日本にはたくさんの空港があるということですし、空港、特に地方空港は鉄道の駅と比べて、身近な施設とは言い難い現状も垣間見えます。
加えてコロナ禍の世の中では、ますます空港と縁遠くなっている人が大半です。飛行機に乗らないのであれば空港に行く必要がないのは当たり前です。でもここ数年、空港は飛行機に乗るだけの場所ではなく、飛行機に乗らなくても楽しむことができるエンタメ施設へと進化を遂げているのです。特に地方空港の進化は著しいものがあり、どんどん身近な施設へと変化しています。
今は感染拡大防止と観光業振興の両立という観点から、マイクロツーリズムが注目されていますが、近くの地方空港はそんな時代のドライブ先としてお勧めです。では、どんな空港がいまおもしろいのか。国内外の空港を200ヶ所以上訪れた筆者が、実体験に基づき「ぜひ足を運んでいただきたい空港」をご紹介したいと思います。久々に地方空港を訪ねてみると、みなさんもきっとその進化に驚くはずです。「なんだか空港が楽しくなっている!」と。
空港グルメを楽しもう!
旅の行先を選ぶ決め手のひとつは「食」ではないでしょうか。最近の地方空港のレストランはその土地の飲食店が運営していることが多く、さまざまな空港でおいしいご当地の味を気軽に楽しめます。食を楽しむためだけでも、地方空港に足を運ぶ価値ありです。
富山と女満別でいただく絶品「空港寿司」
筆者がこれまで食べた空港のレストランの中で特におすすめのお店が「富山空港(富山きときと空港)」にあります。
富山空港(富山きときと空港)
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それは、同空港の1階に店をかまえる「とやま鮨富山空港店たねや」です。空港の愛称通りの「きときと」(富山弁で新鮮という意味)な富山湾で獲れたネタで握ったお寿司を比較的リーズナブルに食べられる名店です。
もともとは空港をよく利用する地元のビジネスマンにはよく知られていたお店でしたが、魚の味にうるさい地元の人たちにも口コミでおいしさが広まったのです。結果、今では飛行機に乗らない地元の常連客でいつもいっぱいの、空港寿司の名店となりました。予約してでも立ち寄るべき空港のレストランです。
同じく空港寿司といえば北海道の「女満別空港」もお勧めです。
女満別空港
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オフィシャルHP
空港画像提供:北海道エアポート(株)
同空港にある「Standing SUSHI BAR 縁戸 女満別空港店」はネタの新鮮さでは富山に負けていません。こちらはオホーツクの味覚が中心です。
網走市内の超人気店が空港に出したお店ですが、不定期営業なので空港に降り立って開いていたらラッキーと思ってください。さて、こちらのお店は味だけでなく、お店の作りにも注目したいところ。
立ち食い寿司というコンセプトですが、上の写真のとおり、まるでカフェかバーのようなスタイリッシュな内装で驚くことでしょう。一昔前はこんなおしゃれでおいしいお店が地方空港に出店するなんて信じられませんでした。
伊丹空港で優雅にカフェを堪能
おしゃれな空港レストランといえば「大阪国際空港(伊丹空港)」の「NORTH SHORE CAFE&DINING」です。
大阪国際空港(伊丹空港)
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空港画像提供:関西エアポート株式会社
こちらは大阪市・北浜をはじめ、関西を中心に数店舗出店する超人気カフェが空港に進出したお店です。店内は旅客のみならず、お子さんを連れた地元のお客さんでいっぱいです。なぜなら……、
カフェの中庭から飛行機の離発着の様子が見えるからです。鉄オタならぬ空オタ候補の子供たちが飽きもせずじっと飛行機を見てくれていますので、大人たちはおしゃれなカフェをゆっくり楽しめます。
「まるでアミューズメントパーク」な空港で休日を楽しもう!
空港の楽しさは、食だけではありません。ターミナル自体がアミューズメント施設として楽しめる地方空港も増えています。
1日いても飽きない!国内屈指のエンタメ空港、セントレア
地方空港と言うのははばかられる巨大国際空港ですが、「進化したアミューズメント空港」を楽しむのならば、ここだけは外せないのが「中部国際空港セントレア」です。
中部国際空港セントレア
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空港画像提供:中部国際空港株式会社
同空港は、現時点で国内トップのエンタメ空港だと筆者は思っています。空港に着いたらターミナルビルにはすぐに向かわずに、その横にある壁面に大きく飛行機(ボーイング787)が描かれている巨大建物へと歩いてみてください。その建物こそが空港につくられた複合商業施設「フライト・オブ・ドリームズ」です。建物内に入るとボーイング787の初号機がドーンとそのまま展示されていて、圧倒されます。
その他、さまざまな展示パネルや豊富な遊具もあり、誰もが航空の仕組みを楽しく学べるスペースなっているのです。さらに、機体の周りにはボーイング社の本社があるアメリカ・シアトル市の名店が並んでおり、気分はまるでボーイング社の工場見学に行っているかのよう。
お店はシアトルのパイクプレイス市場の有名チーズ店「ビーチャーズハンドメイドチーズ」から「ボーイングストア」など、日本のショッピングセンターには見かけない店舗ばかりで、航空ファンならずとも、テンションが上がります。
またシアトルといえばスターバックスコーヒーですが、もちろんフライト・オブ・ドリームズ内にも店舗あり。ボーイング787のコックピット展示のすぐ目の前にあるので、飛行機をこれでもかと拝みながらコーヒータイムを楽しめます。これほど機体に接近してコーヒーを飲める場所は世界でもセントレアくらいではないでしょうか。
ほかにも空港内をセグウェイにのって見学するツアーも毎週(火・水を除く毎日)開催していたり、滑走路を望む展望風呂(コロナ禍で臨時休業中)もあり、とても1日では遊びきれない空港なのです。まさにテーマパーク!
エンタメ空港、北の雄。新千歳も至れり尽くせり
エンタメ空港としてセントレアと双璧をなすのが「新千歳空港」です。
空港内には北海道各地の名産品を取り扱う店舗・飲食店が100以上あるだけでなく……、
映画館から……、
露天風呂を備えた温泉施設……、
さらにはロイズのチョコレート工場まであります。
新しいお店・施設が頻繁に開業し、まさに日々進化しているので、いつ行っても新たな発見があります。この空港の楽しみ方はいろいろありますが、あえてここで紹介したいのは買い物です。旅行好きの中には、ドイツ・フランクフルト空港でスーツケースメーカー・RIMOWAの限定商品(ルフトハンザ航空モデル)を買いに行く、というなんともリッチな旅を楽しむ方がいますが、ここ新千歳空港でも、こうした贅沢なショッピングが楽しめるのです。
狙うは日本で唯一の馬具メーカー「ソメスサドル」の空港限定アイテムです。同店では空港をイメージしたという美しいブルーのパスポートケースやバッグといった限定レザーアイテムがよく販売されており、「ここでしか手に入らない、高品質なアイテムを買う」という体験が楽しめるのです。
“旅”を眺めに空港へ。富士山静岡空港&茨城空港で飛行機の勇姿を眺める
さてさて、コロナ禍で「旅」を自粛している方も多いと思います。そんな時だからこそ空港で「旅の匂い」を感じてみるのも、空港の楽しみ方のひとつです。おすすめしたいのは、空港で飛行機を眺め、旅情の片鱗を味わうプランです。飛行機の姿を楽しむのであれば、「富士山静岡空港」が外せません。
同空港には素晴らしい展望デッキがあるのです。ひと昔前の空港の展望デッキといえば、ターミナルビルの屋上にそのまま階段であがって、フェンスに囲まれ満足に飛行機も見ることができない、おまけに有料、なんてものでした。ところが富士山静岡空港の展望デッキ「石雲院展望デッキ」はそんなイメージを一心してくれる斬新なデザインの展望デッキなのです。
ターミナルビルの隣にあり、滑走路に張り出すようにつくられたデッキなので、とにかく飛行機に近い!明るく開放的なデッキは円形なのでビュー・ポイントが広くとれるうえに柵も低く、おまけにバックには富士山がドーンとそびえ立っているのですから、まさに最高の飛行機見学スポットです。
こんな様子が楽しめるので、天気の良い日は、カメラを構えたスポッター(航空機の動向を追ったり、写真を撮ったりする航空ファン)から子どもまで多くの方がデッキに足を運びます。まさに空港デッキの進化系です。残念ながら現下、デッキにある休憩スペースは閉鎖中ですが、平時ならば無料で静岡茶がふるまわれており、何時間でもいられる素敵な場所なので、世が落ち着いたらぜひお出かけしてみてください。
同じく飛行機を眺める空港ならば「茨城空港」も首都圏からちょっとしたドライブするのにお勧めです。
空港に隣接する「茨城空港公園」には退役した自衛隊の戦闘機が展示されています。
これは茨城空港が航空自衛隊・百里(ひゃくり)基地と滑走路を共用しているためです。そして、こうした特別な位置づけの空港なので、茨木空港では民間航空会社の飛行機に加え、自衛隊機が訓練する様子も見学できるのです。この空港でぜひチャレンジしてほしいのが、民間航機と自衛隊機を同一フレームに収めた写真を撮ることです。これこそが他の空港ではなかなかできない茨城空港オリジナルの体験です。
目的地としても出発地としても、空港は最高のドライブスポット
空港そのものだけでなく、「空港へといたる道」を楽しむドライブも、十分に楽しい旅です。筆者は空港を訪れるために全国さまざまな場所をドライブしてきましたが、最も印象深かったのは石川県「のと里山空港」へのドライブです。
のと里山空港
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「能登空港」Wikipediaより引用。写真はRsa氏による。(CC BY-SA 3.0)
金沢市内でレンタカーを借りて空港へ向かうと、国内で唯一砂浜を走ることができる「千里浜なぎさドライブウェイ」(ただし最近は海岸浸食が進んでしまい通行規制がかかることも多いです)や、国内最長クラスのメロディロード(タイヤと道路舗装の摩擦音が音楽になるようにつくられた道路)である「のと里山海道」といった有名なドライブコースを通ることになります。
空港までの2時間ほどのドライブですが運転していてまったく飽きることなく、あっという間に空港に着いてしまいます。しかも、のと里山空港はなんと「道の駅」として認定されています。
この道の駅ならぬ空の駅はドライブイン機能も持っているのでショップが充実していて、おしゃれな能登の雑貨から地元のデザイナブルな伝統工芸品を購入できます。ちなみにパスポートセンターも併設されている珍しい空港です。
「空港発」のドライブを楽しむなら、みやこ下地島空港&福江島空港
空港へ行くだけがドライブの楽しみではありません。空港に到着し、レンタカーで出発するドライブプランもおすすめです。余談ですが、ヨーロッパでは「空港こそ最高のクルマのショールーム」と言わんばかりに、最新のクルマをラインアップした巨大なレンタカーショップが立ち並んでいます。大衆車から高級車まで、まるでカーディーラーのように車種豊富なので、利用客の中には自分が次に狙っている車をレンタルする人も少なくありません。宣伝やマーケティングの観点で、空港とクルマは相性がいい存在といえそうです。
さて、空港発のドライブを楽しむなら、外せないのが「みやこ下地島空港」です。
みやこ下地島空港
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空港画像提供:下地島エアポートマネジメント
同空港は宮古島のお隣にある小さな島の小さな空港ですが、まるでリゾート地のラグジュアリーホテルのような雰囲気です。
この空港は、レンタカーを借りるまでの動線が大変秀逸です。空港に到着してバゲッジクレイムを抜けると、すぐにレンタカーショップのカウンター前に出るつくりになっており、受付をすますとそのまま目の前の空港駐車場に停めているクルマにすぐ乗れます。レンタカーに乗るまで移動のストレスは一切ありません。クルマを借りたら、空港出発のドライブとしては最高クラスの素晴らしいコースが待っています。伊良部島と宮古島を結ぶ、無料で通行できる橋としては日本最長の伊良部大橋です。
絶景を眺めながらこの橋を走れば宮古島に渡ることができます。なお、宮古島に渡らなくても、空港滑走路の先端部付近には、通称「17エンド」と呼ばれる飛行機が着陸する様子を大迫力で見ることができる空港マニアには有名なスポットもあります。車両は進入禁止ですので、付近の駐車場にクルマを停めて、徒歩でのアプローチになってしまいますが、最高の景色が楽しめます。
同じく島の空港として長崎県「福江空港(五島つばき空港)」も空港到着後のドライブを楽しむことができます。
福江空港(五島つばき空港)
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福江島を含む五島市は再生可能エネルギー推進に力を入れているので、電気自動車(EV)のレンタカーも豊富です。
さらに、島内には充電スタンドが充実していますので、エコな島巡りが楽しめます。
いつかは行きたい!海外のユニーク空港をチラ見してみよう
エンタメを提供する空港ならば、海外も大変ユニークです。たとえば、ドイツの「ミュンヘン空港」は空港内でビールが飲めるのです。そんなの当たり前、と思うなかれ。こちらで飲めるのは「Airbräu 」というオリジナルビールで、驚くべきは空港内で醸造しているということです。さすがビール大国ドイツ!
土地柄にちなんだ、といえば、アメリカはラスベガスの「ハリー・リード国際空港(2021年末にマッカラン国際空港から名称変更)」もユニークです。カジノの本場ラスベガスらしく、空港内にもスロットマシンが置いてあり、旅の最後の最後までカジノを楽しめます。
そしてもうひとつ。世界屈指のエンタメ空港といえば、シンガポールの「シンガポール・チャンギ空港」です。2019年に巨大商業施設「ジュエル」ターミナルとターミナルの間に開業しました。各種ショップやレストランが豊富なのはもちろん、圧巻は屋内庭園です。
世界最大をうたう屋内の滝があるのですから、そのスケールに圧倒されます。筆者はこうしたユニークな海外空港の運営者に話を聞いたことがありますが、実は日本の鉄道駅を参考にしている、と語る人もいました。“エキナカ”文化は海外に飛び出し、“ソラナカ”へと一部で進化しているようです。
地方空港で「旅の匂い」を楽しもう
日本の地方空港も海外の空港に続けとばかり、空港を楽しい場所にしようと日々進化しています。コロナ禍の情勢にかかわらず、当面は飛行機の利用客はかつてのような数にはならないでしょう。こうした状況を打破する意味でも、飛行機に乗らないお客さんをもっと呼び込むために、地方空港のエンタメ化の動きは今後も加速していくと筆者は予測しています。この先、もっと新鮮な驚きを与えてくれる空港が現れるかもしれない、と考えるとなんだかワクワクしてきます。
もちろん、空港が本来持つ基本的な機能だけでも十分に地方空港は楽しめます。飛行機の離発着の様子や行先の案内板をゆっくり眺め、アナウンスを聞いているだけで、旅を疑似体験しているような気になってきます。コロナ禍で移動が制限されている中だからこそ、「旅」の匂いをより強く感じとることができるのではないでしょうか。ぜひみなさんも身近な地方空港にドライブしていま楽しめる旅をしてみてください。
著書:最高の空港の歩き方
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