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アイディア満載! おもしろドライブスルー
1号店はあいまい? 日本のドライブスルーの発祥
ドライブスルーで商品を提供する形態の店舗が、日本に初めてできたのは1960年代と言われており、その「1号店」とされるお店には、さまざまな説があります。なかでも有力とされているのは、東京都中央区の「株式会社山本海苔店」、新潟県長岡市の「フレンド喜多町店」、東京都杉並区の「マクドナルド環八高井戸店」です。
いずれも、ドライブスルー文化が根付いたアメリカの影響を受けたのが、導入のきっかけなのだそう。今では当たり前に存在しているドライブスルー型の店舗ですが、およそ半世紀前は画期的なシステムとして注目されました。
あのサービスもクルマに乗ったまま! “変わり種”ドライブスルー
ドライブスルーといえば、ファストフード店を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実はさまざまな業種で、コロナ禍以前からドライブスルーを採用するお店が数多く存在しています。
○メガネ店
群馬県前橋市にある「JINS パワーモール前橋みなみ店」は、ドライブスルー形式でメガネを購入できる世界初の店舗として、2013年にオープン。ファストフード店のように屋外に設置されたメニューの中から好みのメガネを選び、車内で試着が行えます。
サングラスや機能性アイウエアといった度なしメガネであれば、すぐに受け取りが可能。度付きレンズの場合は、度数がわかるものや手持ちのメガネを渡してレンズをオーダーし、約30分後に仕上がった商品を受け取るシステムで、こちらもクルマから降りることなくスムーズに購入が可能です。
○クリーニング店
クリーニング店「CONG(コング)」は、群馬県内に8店舗を展開。すべての店舗でドライブスルー方式を採用しています。1990年に1店舗目がオープンした当初から時代に先駆け、衣類の受け渡しをクルマに乗ったまま行うスタイルを定着させました。
全店舗に工場を併設し、特殊な衣類を除いて「3時間仕上げ」を基本とすることで、買い物や子どもの送迎などのついでにドライブスルーを利用できるのが魅力です。
チャイルドシートや布団、絨毯の丸洗いといったサービスもあり、これらを家から歩いて持ち運ぶのはひと苦労ですが、クルマを窓口まで寄せて載せ降ろしできるのは、うれしいポイントといえますね。同社では年間のべ30万台以上がドライブスルーに来店するそうで、需要の高さが伺えます。
○質店
こちらはなんと、ドライブスルーでブランド品の買取りや質入れの取引が可能な「カネコ質店ハナミズキ店」です。群馬県高崎市に店舗を構える同店は、1949年に創業した歴史ある質店ながら、ドライブスルー方式という斬新なスタイルを取り入れています。
いかにもドライブスルー王国・群馬県らしいサービスといえるのではないでしょうか。質店に入店するのはなんとなく敷居が高いと感じる方でも、クルマに乗ったままであれば気軽に利用することができそうですね。
○薬局(処方箋の受付&薬の受け渡し)
処方箋の受付と薬の受け渡しにドライブスルーで対応してくれるのは、群馬県内に20店舗を展開する「マルエ薬局」の前橋朝倉店と前橋天川原店。病院を受診した帰りにクルマから降りることなく薬を受け取ることができるのは便利ですよね。
体調の優れない子どもを連れている場合など、クルマを駐車して乗せ降ろしする必要がないのもメリットのひとつ。ドラッグストアも併設されているため、一箇所で買い出しが完結できるのも魅力といえます。
○ラーメン店
北陸地方を中心として、長野県、愛知県、岡山県、また海外にも店舗をもつ「8番らーめん」では、全店舗のうち25店舗にドライブスルーを採用しています。ファンから愛される主力商品の「野菜らーめん」をはじめ、「8番餃子」や「炒飯」など、豊富なメニューをドライブスルーでも販売。
ドライブスルーでは麺が伸びてしまう心配もありそうですが、麺とスープを分けた二層式の容器を使用することで、できたてのおいしさが堪能できます。
群馬県がドライブスルー王国なワケ
先にご紹介したように、ドライブスルーが多い群馬県。電車やバスなどの公共交通機関よりも、クルマが生活のアシとして根付いています。実際に県の統計発表によると、県民の総人口に対する免許取得率は72.1%で全国1位(令和2年4月末時点)と、高い取得率を誇っています。
さらに一般財団法人自動車検査登録情報協会の統計によれば、群馬県における自家用乗用車の県民1人当たりの保有台数は0.701台で全国1位(令和2年3月末時点)。これは東京都の0.226台に比べると3倍以上の値となり、群馬で暮らす人々にとってクルマがいかに重要な移動手段であるかおわかりいただけるのではないでしょうか。
また、平成27・28年度の2年にわたって群馬県が実施した「パーソントリップ調査」というものがあります。パーソントリップ調査とは「人の動き」の実態を把握する交通実態調査のことで、鉄道やバス、自動車、自転車や徒歩などの移動手段別でみると「クルマ」の利用割合が77.4%と高い水準に。
移動距離別にみると、100m未満の移動でも4人に1人はクルマを利用しており、移動距離が500mを超えると半分以上の人がクルマを利用しているという結果が出ています。統計調査からも裏付けられている通り、おもな移動手段にクルマを利用する群馬県の風土にドライブスルー文化が根付いたのも合点がいきますね。
〈移動距離別の代表交通手段構成比〉
日本だけじゃない!海外のイベントでもドライブスルーを活用
人と人との直接的な接触を避けて生活するようになって久しいですが、コロナ禍における新たな取り組みとしてドライブスルーを採用したサービスやイベントも数多く誕生しました。海外では、毎年恒例のイベントをドライブスルー形式で行うユニークな取り組みも注目されています。
アメリカ・ロサンゼルスで昨年実施されたハロウィンイベントは、日本でもおなじみのジャック・オー・ランタンが飾られた道をクルマに乗ったまま進み、ウィンドーを下げて「トリック・オア・トリート」の声をかけると、トランクにお菓子を入れてもらえるというユニークなもの。軒並みイベントが中止されるなかで、こうした取り組みがあると心が躍りますよね。
有名なドイツのクリスマスマーケットも、昨年はドライブスルー形式で実施した地域がありました。ずらりと並んだ露店の前をクルマに乗ったまま進み、焼き菓子やソーセージなどをその場で注文し受け取ることができる便利な方式です。
クルマで移動している間もクリスマス仕様に飾られた露店やイルミネーションを見ながら過ごすことができます。日本でもこうしたイベントが開催されたら、コロナ禍ながらもクリスマス気分をたっぷりと満喫できそうですね。
外出や移動そのものに気を使う日々がまだ続くなかで、ドライブスルーの需要も落ち込みそうにない昨今。今後もさまざまな業種から斬新なドライブスルーが登場するのではと、期待せずにはいられません。また地域によってもドライブスルー文化に特色が見られるので、あまり馴染みのない土地を訪れた際には、めずらしいドライブスルーを探してみるのもオススメです。
<関連リンク>
JINS
https://www.jins.com
CONG
http://www.amip.co.jp/cong/
マルエ薬局
https://marue-pharmacy.jp
8番らーめん
https://www.hachiban.jp
(文:吉田奈苗 編集:奥村みよ(PASSERBY GRAFFICS)+ノオト)
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