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元SKE48・梅本まどかさんの「乗り物愛」がすごい。CB400SF+トヨタ86の6輪生活、そしてモータースポーツ“ガチ勢”になるまで
愛車は一目惚れして手にした、ホンダCB400SF。昨年はガレージにトヨタ86を加え二輪&四輪の“6輪”生活を楽しむ、“乗り物愛”をたぎらせる人がいます。
その人は、アイドルグループ「SKE48」のメンバー、チームリーダーとして活躍した梅本まどかさん。2016年にグループを卒業後、バイクやクルマのメディアを中心に活動しながら、ラリーのコ・ドライバー(ナビゲーター)として競技にも参戦する“モータースポーツガチ勢”です。
アイドル時代にモータースポーツの魅力にハマった梅本さんは、2019年からは国内最高峰の全日本ラリー選手権にチーム「Wellpine Motorsport」で参戦(JN6クラス、トヨタGRヤリスRS)。他にもバイクイベントのMC、「日本二輪車安全普及協会アンバサダー」への就任など、二輪・四輪ともに活躍の場が広がっています。梅本さんの乗り物愛と“6輪生活”について、たっぷりと語っていただきました。
鈴鹿での仕事がきっかけでモータースポーツに興味を持つように
──梅本さんは名古屋を拠点に活動されていて、撮影場所「秋ヶ瀬公園」(埼玉県)には愛車のトヨタ「86」をご自分で運転して来てくださいました。名古屋からだとなかなかの距離ですが、疲れませんでしたか?
梅本まどかさん(以下、梅本) 全然です! 名古屋から都内近郊くらいならまったく苦にならないというか、むしろ「近いな」って思います(笑)。 クルマでもバイクでも走るのが本当に好きで、自分で運転してどこかに行くこと自体が楽しいんですよ。
──そんなパワフルな“乗り物愛”を持つ梅本さんですが、もともとは「SKE48」でアイドル活動をされていましたよね。アイドルを目指したきっかけからお聞かせください。
梅本 昔からアイドルを見るのが好きで、モーニング娘。さんの振りを勝手に覚えて、公園で踊ったりしてました。3歳からずっとクラシックバレエをやってて、その後にジャズダンス、高校はチアリーディングをやっていたんです。
高校3年生でチアを引退し、受験のためにダンスもやめようと思ったのですが、母は「続けてみたら」って。しかも母は勝手にSKE48のオーディションを見つけてきて、「これを受けてからどうするか決めたら?」と言ってきたんです。だから私も「受かったらダンスができるし……」くらいの気持ちで、イチかバチかでオーディションを受けたんですよ。
──ダンスを続けたくてアイドルになった、と。
梅本 そうですね。その頃は、本当は看護師になりたかったんです。高校は中京大中京高校(スポーツの名門校)なんですが、もともと人体や筋肉が好きで、スポーツ選手の筋肉がどう動くのかとか観察するのも好きだったから、「ヒトの身体のこと」をちゃんと学んでみたいと思っていました。
──ですが見事に第4期生として合格し、「チームE」のチームリーダーにも任命されます。そんなアイドル時代に、モータースポーツと出会ったそうですね。
梅本 第4期生はもともと新チーム「チームE」を作るためのオーディションだったんです。デビュー翌年の2011年には「鈴鹿8耐」(鈴鹿8時間耐久ロードレース)の前夜祭で、チームEがライブをさせていただけることになったのですが、鈴鹿サーキットでリハーサルをしていると、合間にレーシングマシンが走っている音が聞こえてくるんですよ。気になってコースまで見に行った時に、「何これ!? 楽しそう!」と衝撃を受けました。
予選日なのでバトルはしてなかったですし、結構遠くから見ていたはずなのに、圧倒的なスピード感が伝わってきたんです。でもレース当日には私は握手会があって、見られなかったのがとっても悔しくて。
そしたら今度は、レーシングドライバーの中嶋一貴選手と一緒に「鈴鹿2&4レース」(全日本スーパーフォーミュラ選手権とMFJ全日本ロードレース選手権を同日開催する人気イベント)のPRに呼んでいただけて。そこから、モータースポーツというものに本格的に興味を持つようになりました。
──運転免許を取ったのもその頃ですか?
梅本 クルマの教習所に通っていました。そしたら隣でやっているバイクの教習が本当に楽しそうで、「これはもう自分も取るしかない!」と思って。普通自動車免許を取ってすぐに、普通二輪免許も取得しました。
──でも実は、グループ内はバイク禁止だったとか?
梅本 そうなんです! クルマの免許は取っていいけど、運転はしてはいけないというルールがあって。でも大人メンバーは運転しているし、周りも普通に免許を取っていたんですね。私もクルマの時は何も言われなかったので、バイクの免許を取った後に公演のMCで「取りましたー!」ってファンに報告したら、スタッフさんから裏に呼び出されて(笑)、「なに言ってんだ、お前!」ってすごく怒られたんです。そこからバイクの話は表に出しちゃいけないことになって、卒業までペーパードライバー&ライダーでした。
SKE48を卒業後、徐々に「走る」仕事へ、そしてラリーへ
──グループを卒業後、ソロ活動を始めるにあたり、最初から乗り物系のお仕事をやっていこうという意向はありましたか?
梅本 “SKE48のアイドル” という肩書がなくなった時に、今まで個人でいただいていた仕事を続けられるのかな?ということが不安だったんです。
でも、まずF1の予想や感想を書くお仕事のスタッフの方々が「続けようよ」と言ってくださって。そこからスマートフォン向けの放送番組でF1についてトークするお仕事をいただけたり、四輪のエコレースに出たり、サーキットでタイムアタックに挑戦したりと、だんだん走るお仕事も増えていきました。
──二輪系のお仕事も気兼ねなくできるようになりましたね。
梅本 最初に呼んでくださったオートバイ雑誌では、今もお仕事をさせていただいています。その時の撮影で初めて、教習車とも、自分のバイクとも違う車種に乗ったんです。自分のバイク以外に乗れる機会なんてなかなかないじゃないですか。だからとにかく乗れたことがうれしかったし、編集部の人にも「乗る前と乗った後で、顔が全然違った」と言われました。
私はやっぱり乗るのが好きだから、乗った時の私のリアクションを見て、「一緒に仕事しようよ」と言っていただくパターンが今も結構あります。怖がりだし、すごい心配性で、乗る前は信じられないくらいビビってるんですが(笑)。
──そして2018年にはラリーのコ・ドライバーとしてのデビューも果たします。この挑戦はどのように決まったのですか?
梅本 私は最初にちゃんと観た四輪レースがスーパーフォーミュラだったこともあって、F1とか、スーパーGTとか、ずっとサーキットレースばかり観ていて、ラリーという競技を知らなかったんですよ。
梅本 あるイベントで「もっとクルマのことを勉強したいんです」という話をしたら、公道を走るラリーを薦められたんです。ラリーなら選手もクルマの整備をするから仕組みを理解できるし、運転が苦手でも、コ・ドライバーをやればいいじゃない?って。調べてみたら、運転に専念するドライバーと、隣でナビゲーター役を務めるコ・ドライバーの2人1組でやる競技だとわかって、めちゃくちゃ面白そうだと思いました。
しかもコ・ドライバーの役割は、競技中の時間管理や、コースの情報を的確に伝えて、ドライバーさんの良さを引き出すこと。私はイベントMCの仕事もしているので、全体を把握してゲストの話を引き出すところに共通点があると感じて、やってみたくなったんです。そしたら、「ちょうどシートが空いてるよ」って言ってくれるチームがあって。
──初競技の前は相当練習したのでは?
梅本 初めての競技は初心者向けのワンデーラリーだったんですが、チームの事情で事前練習ができなかったんです。でも、コ・ドライバーは「ペースノート」というコースの情報が書かれたノートを走行中に読み上げてドライバーに伝え、設定目標時間の厳守などのルールをしっかり理解しておかないと務まらないので、ベテランの方による講習を受けました。
──その時のことは覚えていますか?
梅本 めっちゃ楽しかったです! 変な言い方になりますけど、たぶん誰も私に期待していなかったと思うんですよ(笑)。組んだドライバーさんはレースクイーンをされているベテランの方だったのですが、当日が初対面でしたし。
でもそのドライバーさんとは性格が似ていたのか、相性がすごく良くて、私が読んだノートをちゃんと聞きながら走ってくれて、優勝したんですね。みんなびっくりしながらすごく喜んでくれて、なんて気持ち良いんだろうと思いました。
──ラリー参戦初年度は、「TGRラリーチャレンジ」で年間チャンピオンを獲得。2019年からは全日本ラリー選手権に参戦を続けています。今年は11月に開催予定の世界最高峰のラリー選手権・WRCの最終戦「ラリージャパン」への出場も目指しているそうですが(※取材当時。2021年9月7日にFIA世界ラリー選手権「フォーラムエイト・ラリージャパン2021」の開催断念が発表されました)、ラリー競技のどこに魅力を感じていますか?
梅本さんのInstagram:https://www.instagram.com/p/COxNeTns4ev/
梅本 ドライバーさん一人ひとりにそれぞれのペースがあるし、ノートの作り方も違うので、それを理解して合わせるのがすごく楽しいです。チアリーディングをやっていた時や他のスポーツを見る時もそうだったんですが、その人の人となりを知ったり、人間味を感じたりする場面にすごく興味がありますね。
梅本 一般的にモータースポーツといえば、スピードや競り合いが魅力という方が多いと思いますが、実は私、自分が競争ごとをやるのは嫌なんです。以前、オートバイのミニバイクレースに挑戦した時も本当に向いていなくて。人とバチバチしなくちゃいけないバトルがすごく苦手で、「早く(私より前に)行ってください!」って思っちゃうんですよ(笑)。
だから「ラリージャパン」にはもちろん出場したいのですが、私としては全日本の一戦一戦もすべてが大切です。結果も大事ですが、それ以上に私自身が心から競技を楽しんで、その楽しさを伝えることが一番だと思っています。
──では、ご自分がモータースポーツを観戦する側になった時は、何に一番注目しますか?
梅本 ライダーもドライバーも簡単にシートが手に入るわけじゃないし、絶対にいろいろなものを背負っていると思います。よくF1などで、出走前のドライバーが緊張で吐いてしまう話があるじゃないですか。「そこまで!?」と思うような状況でも勝ちに行くその精神について、自分の知らない世界だからこそすごく興味が湧きます。だから、選手の性格や人柄を知った上で応援するのが楽しいですね。
キレイな景色に格好良いクルマとバイクがあったら最高!
──プライベートについてもお聞きしたいのですが、まずSKE48を卒業して、オートバイに自由に乗れるようになった時の感想は?
梅本 アイドル時代に貯めたお金をはたいて自分のバイクを買って、メットも買って、ウェアも全部そろえて、「憧れてた自分になれた!」みたいな感じだったので、とにかく乗れるのが楽しかったです。
──数あるオートバイの中から、CB400SFを選んだ理由は何だったのでしょうか。
梅本 最初はお金のことも考えて、「250ccの黒いバイク」にしようと決めて、探し始めたんです。でもいざバイク屋さんに行ってみると、迷ってしまって、なんだかんだで5店舗くらい回りました。
最終的に、ホーネットという250ccのバイクに決めかけたんですが、その隣に、今私が乗っているCB400SFの「スペック3」が置いてあったんですよ。ふとまたがってみたら、なんとも自分にフィットする車体の軽さだったんです。黒い車体にゴールドのホイールがめちゃくちゃ格好良いし、エンジンをかけてもらったら音も良い。
「Revo」というひとつ新しいモデルもあって、店員さんには「こちらの方が整備状態も良いですよ」と薦められたのですが、私は「なんか違う」と(笑)。今でも黒×ゴールドの組み合わせがたまらなく格好良く思えるし、このCBは絶対に手放さないって決めています!
梅本さんのTwitterはこちら:https://twitter.com/maronchan_1/status/1428126366373797889
──そして昨年にはトヨタの「86」を購入されて、念願の二輪&四輪生活が始まりました。「86」を選んだ理由は?
梅本 バイクを購入する時、「絶対カスタムしない」と決めて買ったんですね。私は良くも悪くも頑固なので、その気持ちを変えるつもりはないけど、カスタムしないことで知ることができない世界があることも自覚していました。
だからクルマでは逆に、ちゃんとカスタムをしてみたくて。ラリーの経験から試してみたいこともあるし、アフターパーツが豊富な「86」ならそれができると思いました。今はまだホイールが変わっただけですが、これからどうしようかと考える時間が楽しいですね。競技でバケットシートの快適さを知ってしまったので、まずはバゲットシートに変えたいのですけど。
──先ほどの「バイクの購入代金はSKE48時代の貯金」という発言が気になったのですが……。
梅本 車両の代金だけじゃなくて、ウェアやヘルメットといった乗るのに必要な装備、1年分くらいの維持費などを全部トータルで計算して、その金額が貯まってから買いました。「86」を買ったのも計画を立ててから。とにかくローンが嫌で、金銭的にギリギリの状態で買い物するのも絶対に嫌なんです(笑)。
──素晴らしい計画性ですね(笑)。では今後、ご自分の乗り物愛をどのように活動に活かしていきたいですか?
梅本 やっぱり私は乗り物が好きなので、その魅力を広める活動はずっとやっていきたいですね。
昨年から「日本二輪車普及安全協会アンバサダー」をさせていただいてますが、「安全」は乗り物を楽しむ上で本当に大切な要素のひとつ。「オートバイは危険」というイメージを変える方法は、安全に乗る人が増えることしかないと思うんです。
モータースポーツにしても、車両に使われている技術が、実は、私たちが普段の移動に使っている市販車にも直結しています。二輪も四輪も世界に誇れるメーカーがある日本の乗り物はやっぱりすごいし、もっともっと盛り上がってもいいんじゃないかと思うので、少しでも私にお手伝いできることがあればやりたいですね。
プライベートでの願望はシンプルで、ドライブとツーリングにもっと行きたいです。それが乗り物に対して私が一番楽しみにしていることだし、キレイな景色に格好良いクルマとバイクがあったら、もう最高じゃないですか?
──これからも、二輪と四輪、どちらも楽しむ生活が続きそうですね。
梅本 はい! 昔から、もしも「二輪か四輪のどちらかに専念してほしい」ってお仕事が来たら、それはお断りすると決めているくらいですから(笑)。オートバイもクルマも私の生活には絶対に欠かせないものですし、これからも両方を楽しんでいきたいと思います。
編集:はてな編集部
取材・文:齋藤春子
撮影:関口佳代
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